- 作者: 西内啓
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/01/28
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データ社会を生き抜くための武器と教養
Literacy for the Next Generation
だそうです。ここでいう「学問」は、「学問のススメ」でいうところの「学問」だと思っておけばいいと思う。
感想としては、「よくまとまっているな」というもの。「ああ、そうか、こういうのが知られていないのか」「こう説明すればいいのか」という内容。
いわゆる「ビッグデータ」をどう使うべき(使うべきでない)のか、そもそも統計学とは何なのか、ということが分かりやすく説明されている。
特に良いのが、様々な手法の得手不得手や前提条件をきっちり示しているところ。これがしっかりしているので、バズワードに乗っただけの本とは一線を画している。
メインである「ランダム化」についても、それが万能だとかは言っていない。
世の中にはランダム化を行うこと自体が不可能な場合、行うことが許されない場合、そして行うこと自体は本来何の問題もないはずだが、やると明らかに大損をする場合、という3つの壁がある。(No.1453)
この辺は、その数学が戦略を決める*1もほぼ同じ事を書いてあったな。(と思ったら、しっかり参考文献にあがってました。)
そして、そういうときにどういう方法をとるのかも解説してある。ランダム化できないなら、他の条件を揃える工夫をするのである。この辺も一つ一つ丁寧で良い感じ。
なかなか、説明が難しいベイズ統計(推計)もうまく説明してあって参考になった。
計量経済学とベイズの相性が良い理由というのも、読んでいて「ああ、なるほど」と。
ベイズ的な考え方であれば、「事前確率」という過程を置くとデータからどういったことが言えるか、という演繹が可能になる。(No. 3014)
そして、単に「学問」(ビジネスの道具)としてだけでなく、現代人として統計学の考え方を知っておくべきだとも言っている。
現場の実務者や専門家である研究者がその成果を実証せず、彼らの仕事を批判する評論家や政治家がろくに論文も読まず、無責任な意見を述べる。一方、彼らの仕事を評価すべき市民側にそうした現状への問題意識がない。
これらをひっくるめて「日本全体での統計リテラシー不足」ということができるだろう。
統計リテラシーがなければ、ビジネスの問題と同様に社会や政治に関する問題についても、経験と勘だけの不毛な議論が尽きることはない。(No.3245)
本書中には何度もタバコ問題が難癖の例として出てきていたけれど、今なら放射脳関係の話題の方が社会的に損害をもたらしている問題ということで妥当な例になるのかな、とも思った。
統計学、ビッグデータというあたりに関心がある人にお薦め。というか、読んでおくと、他の本とかを読むのが楽になると思う。
*1: