歴史家の大木毅先生が、ゲーム雑誌に寄稿した歴史記事をまとめて一冊にしたもの。オフィシャルページはこちら。
まえがきには、「コマンド誌で最新研究を取り入れた記事を書けて良かった」といった記載に続けて、
思わぬ苦情を受けるようになった。非ゲーマーではあるが、戦史ファンであるというみなさんから、お前の記事を読みたいのだけれど、そのために『コマンド』を買うのはきつい、なんとかならないかという要望が寄せられたのだ。
と書いている。これに答えて、
- クルスク戦の虚像と実像(初出:『シックス・アングルズ』第11号、2008年)
- 新説と「新説」のあいだ(初出:『シックス・アングルズ』第12号、2008年)
- 冬のアイロニー(初出:『コマンドマガジン』第85号、2009年)
- 作戦が政治を壟断するとき(初出:『コマンドマガジン』第86号、2009年)
- SS中佐パウル・カレル(初出:『コマンドマガジン』第87号、2009年)
- 極光の鷲たち(初出:『コマンドマガジン』第88号、2009年)
- ある不幸な軍隊の物語(初出:『コマンドマガジン』第89号、2009年)
- 百塔の都をめぐる死闘(初出:『コマンドマガジン』第89号、2009年)
- モンスの天使たち(初出:『コマンドマガジン』第86号、2009年)
- 「編制」・「編成」・「編組」(初出:『コマンドマガジン』第88号、2009年)
といった記事をまとめている。(若干の追記あり)
大木先生の比較的古い記事については、鉄十字の軌跡*1にまとめられている(私の感想はこちら)が、こちらは上記の通り、ここ5年くらいの記事が収録されている。ゲーム雑誌で読むと、「どういう風にゲームに反映させるか」みたいな視点で読むことが多くなるが、歴史書としてよむと、また視点が変わってくる、ような気がする。
パウル・カレルの記事はかなり話題になったと思うけれど、あんな感じで通説に疑問を投げかける記事が多い。ゲーマーだと、新資料で明らかになった新事実、なんてのはちょくちょく耳にする話だけれど、海外で発表される新説を耳にする機会は確かに少ない。そういう点で、クルスクの記事とか「新説」の記事もお薦め。
http://a-gameshop.com/SHOP/bg001.html で買えます。800円。正直言うと、電子書籍で出してくれると更に嬉しかったかな。(DRMのかかっていないPDFだともっと嬉しい。検索かけられるのは、やっぱり良いものなのです)
でも、ゲーマーが記事一つ目当てで歴史雑誌を買うことはあると思うので、たまには戦史ファンの人がゲーム雑誌を買ってくれてもいいんじゃないかな、とちょっと思う。
*1: