大木先生が昨年出した独ソ戦の概要紹介本。賞を取ったというニュースが流れてきて、そういえばと思って自分の日記見返したら、書いてなかった。以下、備忘録代わり。
一つ大きなポイントが、「通常戦争、収奪戦争、絶滅戦争(世界観戦争)」という分類を置き、独ソ両国にとって「通常戦争」に収めることが不可能だったという分析。程度の分析について細かく書かれているわけではないのでそこは専門家の検証を聞きたいところだけれど、見方としてはなるほどな、と思った。
もう一つは、古い(冷戦期中、資料の公開が限定的だった頃)の通説が今は色々と変わっているのに日本ではそこが伝わっていないので、アップデートしたいという狙い。こっちについてはコマンドマガジンとかの大木先生の記事で書かれていることが中心だけれど、スモレンスクやクルスクの展開、国防軍の判断、当時の軍事的制限などの話。単純に情報として面白い。
もう一つ、作戦術関連の話がある。当時のソ連の作戦術が卓越していたという話で独軍はこのレベルでは完全に負けていたという分析。これ、訳語が微妙かな(作戦を遂行する技術のことではなく、戦略を作戦に落とし込む技術のことなのだけれど、前者に思えるよなあ)と思っていたので説明して貰えるのはありがたいのだけれど、別の本が一冊欲しいとも思う。結果としてそうなっているのは分かるけれど、赤軍の意思決定の流れがよく分からないんですよ。