k-takahashi's blog

個人雑記用

突変

突変 (徳間文庫)

突変 (徳間文庫)

関東某県酒河市一帯がいきなり異世界に転移(突変)。ここ裏地球は、危険な異源生物(チェンジリング)が蔓延る世界。妻の末期癌を宣告されたばかりの町内会長、家事代行会社の女性スタッフ、独身スーパー店長、ニートのオタク青年、夫と生き別れた子連れパート主婦。それぞれの事情を抱えた彼らはいかにこの事態に対処していくのか。異様な設定ながら地に足のついた描写が真に迫る、特異災害(パニツク)SF超大作!

ポスト東日本震災という位置づけの災害SF。日本の地方都市が舞台で、ほとんどの登場人物が野心に乏しい感じなのがある意味リアルではある。(トンデモ系の登場人物もいるが、迷惑だが支持は厚くないという感じの扱い)


結構分量は多い(kindle だと、8000以上ある)のだが、後半説明文が増えるのは尺の都合なのかな。作中の経過時間はほんの数日だから、じっくり書き込むというのも難しいんだろうけど。


世界構築もしっかりしているし、文章もいいんだけど、私が森岡浩之に期待しているのとはちょっと違ったかなというところ。
世界設定のところを含めて、クライマックスの部分は結構好みで、こっちの方向に突っ走った続編を期待したいけれど、本作自体は非SF読者向けも意識しているようなので、方向違うかな。


ググってみたら、本人のコメントがあった。

こうして、現代社会の大半と切り離されながらも、科学技術文明の維持に奮闘する人々の世界が思い浮かんだ。ここでなら、一杯のお粥を巡るドラマだってつくることができそうではないか。
 しかしいきなり、「おとっつぁんに食べさせる粥のため、南海の小美人が敢然と立ち上がる! 下町人情巨編『言わない約束』をいま、ここに壮大なるスケールでお届けする!!」なんてやっても、世に受け入れられがたいだろうな、ということで、まずこの世界を案内するための話をつくることにした。それが『突変』である。
 つまり、『突変』そのものは下町人情ものではない。市井の人々が主要登場人物だが、彼らが暮らすのは下町ではなく、地方都市の郊外だ。
 ちょうど〈アーヴによる人類帝国〉を案内するために『星界の紋章』を書いたように、〈寓地〉と名づけた世界の設定を説明するため、『突変』は書かれたのである。

「突変」森岡浩之 – SF Prologue Wave

だとすると、ちょっとテンポ配分が違ったのかな、と思う。
アメリカのテレビシリーズの拡張版第1話、という感じなんですよ。だから続きが欲しい。『星界』の最初の3作ほどきちんと閉じていないせいもある)