k-takahashi's blog

個人雑記用

やさしい統計 〜ゼロ・イチの呪い

大学の教養課程で「統計学」を履修したことがある。選択必修科目の一つで、私の周りでは大抵の人が履修していた。
同じ統計学でも先生によって内容は違っていて、私が取ったコースの先生はいわゆる数理系の教授の方。講義の大半を理論面にあてていて、第一回の講義は1時間半を使って確率の様々な定義とその数学的位置づけについて語ってくれました。
でも、その先生が指定した副読本の筆頭には『統計でウソをつく方法』*1があげられていた。原書*2は1954年の発行、日本語版も1968年の発行で、半世紀以上に亘るベストセラーでこの分野の必読書。意図的にウソをつく場合もあれば、間違った理解のために間違った結論を出してしまう失敗もある。類書はたくさんあって、想定読者層、数学に踏み込む程度、扱っている例のアップデートなどで差異化を図っている。


で、本書は「数学ガール」シリーズの一冊。難易度的には高校数学程度で、実際にきちんと計算してみせて、例としてはグラフの演出による印象操作を冒頭に配置、仮説検定(大数の弱法則)まで扱っている。チェビシェフの不等式を証明付きできちんと扱っているのはさすが数学ガール


本書の発売は11月だったのだけれど、12月に池上彰が本書の第一章を地で行くトリックを使っていて、ちょっと話題になっていた。

グラフのトリックに関する話題は『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の第1章に登場します。Kindleの無料サンプル版では第1章がまるまる読めますよ。池上彰さんも使うことがわかったグラフのトリック、この機会にぜひお読みください

結城浩 on Twitter: "グラフのトリックに関する話題は『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の第1章に登場します。Kindleの無料サンプル版では第1章がまるまる読めますよ。池上彰さんも使うことがわかったグラフのトリック、この機会にぜひお読みください。 https://t.co/z5cSpDuOQ4… https://t.co/7MR8hKG7GR"

グラフのトリックは、そういう手口が横行しているという知識だけでも義務教育すべきだと思っているけれど、どうなんだろう


そして、もう一つ大事なのが「ゼロ・イチの呪い」。

ゼロかイチか、シロかクロか、フェアか否か……たとえ≪二つに一つ≫だからといっても、断定ができない場合にまで、どちらかに決めたがるのはあやうい(p.203)

その断定ができない場合に、主張の強さを考える必要があり、それを大数の弱法則で示している。
でも、素直なテトラちゃんならともかく、ゼロ・イチの呪いにハマってしまっている人に本書を最後まで読ませるのは難しいだろうなあ。(呪いを意図的に悪用している論外な人間もいる)

*1:

統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス)

統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス)

*2:

How to Lie With Statistics

How to Lie With Statistics