k-takahashi's blog

個人雑記用

熱い方程式、うつろう物体

booth.pm

booth.pmケン・バーンサンド(Ken Burnside)のエッセイの翻訳。パピーゲート騒動に巻き込まれた形でヒューゴー賞を取り損ねているが、本作自体は政治騒動とは縁遠い、科学・工学的視点からの宇宙船行動の制約についての小論集。

どういう制約があり、それはどういう風に影響するのかを解説してくれている。

 

全体的に平易に分かりやすく書かれているとは思うが、全くの初心者向けとはいかない。ロケットとか人工衛星、惑星探査衛星関係の本を2,3冊読んでいれば大丈夫とは思う。そのあとなら、色々なものが整理されて、面白い切り口も加わって、なので楽しく読めるはず。

 

単純に知識を整理するトピックも紹介されており、例えば、エンジンの明るさから推力が分かるので奇襲は難しいとか、5ミリG/600ミリG/3000ミリGとか(太陽系内の2点を移動するに最低限必要な推力、ホーマン軌道を使うための推力、地球表面から離脱するための推力)、3km/sで衝突する物体のエネルギーは同量のTNT火薬に匹敵し、3.5km/sで高性能爆薬に、10km/sで核爆弾に匹敵する、などなど。

 

「理論的・工学的にこういう制約がある。だからこういう話なら面白くなるだろう」みたいなネタも紹介されている。(海賊はどこに来るか、軍事行動でどういう錯誤が起こりうるか、タイムリミットはどうなるか、など)