k-takahashi's blog

個人雑記用

ニュートン 2012年8月号

Newton (ニュートン) 2012年 08月号 [雑誌]

Newton (ニュートン) 2012年 08月号 [雑誌]

世界最速の科学

特集はオリンピック合わせの「世界最速の科学」。アスリートの能力や、人間の性能限界などの話。
帯には「金メダル遺伝子」というのが書かれているが、これはヤニス・ピツラディス教授のインタビュー中に出てくるもので、トップアスリートに共通する遺伝子が見つかったという話。
インタビューによれば、世界レベルの短距離ランナーは例外なくACTN3というタイプの遺伝子を持つそうだ。もちろん特定の遺伝子の有無という単純な話ではなく組み合わせが問題となるわけで、教授は「遺伝子のアルゴリズム」という言葉を使っている。


この記事で一番面白かったのが、フライングの話。
現在のルールでは「ピストル音から100ミリ秒よりも早く動くと失格」となっている。これは音を感知した耳の神経から脳を経由して筋肉へ電気信号が送られるまでには最低100ミリ秒かかるから、という知見がもとになっている。
ところが、最新のレポートによるとこれが更に短くなる可能性があるそうだ。
現在の定説では、聴覚神経〜脳幹〜聴覚野〜運動野の伝達には65ミリ秒かかることになっているが、これは10ミリ秒短縮できそうだとか。さらに、スタート時に動かす筋肉を脚の筋肉ではなく腰の筋肉にすることで神経伝達距離が短くなりこれで10ミリ秒稼げるとか。合わせると20ミリ秒短縮できることになる。20ミリ秒(100分の2秒)は、ゴール時点では20センチの差になる。体一つ分。
なんか凄い世界だ。

重力波

重力波の観測ができそうな状況になってきているが、それの解説。
キロメートルレベルの観測装置の完成が間近なのだ。(日本のかぐらアメリカのLIGO、宇宙観測衛星のLISA)
かぐらは、7億光年以内で中性子連星が合体するときの重力波が観測できる。この範囲内で中性子連星合体は年数回起こっている。ということでかぐらが予想性能を出せれば1年程度で観測ができることになる。


ちなみに、重力波観測の最大の強みは宇宙誕生直後の情報が取れること。重力波はプラズマを透過できるので、ビッグバン以前の情報が観測できる。

人工光合成

先週末のサイエンスゼロでも人工光合成の話をやっていたが、ほぼ同じ内容で、光触媒や可視光の利用など。


NHKが触れなかった面白い話題があり、実は、人工光合成最大の課題は太陽光発電とのコスト競争。人工光合成のポイントは水から水素イオンと電子を取り出す部分だが、太陽光発電で作った電気で水を電気分解しても同じものが得られる。
太陽光発電の効率が15%、電気分解の効率を80%とすると12%になる。なんらかの形でこれを上回らないと意味が無いのだが、現在はまだ1%未満。イメージはともかく、数字的にはまだまだということになる。
もちろん、性能ではなく製造コストを圧倒的に下げるという可能性もあるから変換効率だけで決まるわけではないけれど。