k-takahashi's blog

個人雑記用

戦争請負会社

戦争請負会社

戦争請負会社

扇情的なタイトルだが、オリジナルは "Corporate Warriors: The Rise of the Privatlized Military Industry"。

昨秋、イラクでハート・セキュリティー社の斎藤昭彦さんが殺害されたことが報じられたが(変に偏っていないレポートとしてはこちらの溜池通信のレポートがよいかと。)、そもそも「民間軍事会社」とは何なのか、どういう経緯があるのか、何が目標で、どんな能力があり、何が問題で、どう対処するべきなのか、こういったことを手際よくまとめ上げた一冊である。

歴史的には、国民軍というものが組織されたのはナポレオン戦争の頃からであり、それ以前は専門家集団としての傭兵が中心だったこと。かの「ジュネーブ条約」が実は、傭兵というものを法的に否定し、暴力の国家独占を図るものだったこと。といった指摘が面白い。(国民軍が専門家集団に勝てるようになったのは、国家の財力の向上と銃器の発展により、相対的に個人技術の重要性が低下したことによるものらしい)


第二次大戦後、冷戦期には、それこそフォーサイスのりの「戦争の犬」が多かったが、冷戦終了で話が変わってくる。冷戦終了による軍縮南アフリカの政変による軍縮、などによって、多数の専門家を民間レベルで入手可能なコストで揃えることができるようになってきたのだ。シオラレオネやコソボの実績は事実非常に大きなものになっている。

しかしながら、ジュネーブ条約よってその存在を否定され、つまり、法により抹殺されかかった中から復活した非国家軍事組織は、逆に法との折り合いが悪いという問題もある。これが様々な問題を引き起こす要因の一つとなっている。

最後は、民間軍事会社国際法秩序の中に取り込むために必要なものは、という話になる。(が、正直ここの部分の提言にはリアリティを感じられないのも事実。)ましてや、対処相手が国際法秩序を無視するとなれば、なおさら会社側ばかりを縛るのには無理がある。


1年ほど前の日本では、郵便業務を民間に委託することの是非が衆議院解散にまで拡大したが、はるかにシビアなレベルの話が、とうの昔に始まっていたのだな、とも思った。


そして、なにより現代以降を部隊にしたRPGを遊ぶ人にとってはネタの山である一冊。

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