- 作者: 涼元悠一
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2006/07/25
- メディア: 単行本
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恋愛ノベルゲームにおける最凶最悪の大惨事とはなんでしょう?
それはずばり、『ヒロインの名前が母親とモロカブリ』です。
これはもう、買ったばかりの大画面液晶ディスプレイのど真ん中に真っ赤な常時点灯ドットを見つけたぐらいのすさまじいガッカリ感です。「よりにもよって俺狙い撃ちかよ!」という感じです。さりとてメーカーに返品するわけにもいきません。
こういう惨劇を招かないためにも、ヒロイン達には可愛くてイメージが合い、さらには実際にはあまりない名前をつけてあげなければいけないのです。(p.74)
一番笑ったのが上記引用部分ですが、ビジュアルアーツ社で3本ほどシナリオを書いた涼元悠一氏によるノベルゲームシナリオの書き方です。
他にも身も蓋もないようですが、
シナリオや設定をいじっても、どうにもキャラがたたない、困った……という時は、キャラクターの絵に問題があるかもしれません。
(中略)
なんだかんだ理屈を並べ立てても、女の子は見た目が最重要だったりしますから。もちろん、ことゲームにおいては、です。(p.146)
とか。
涼元氏は一般小説もある程度書ける人なので、一般小説との共通点や違いも意識した書き方になっている。系統立っているというよりは、涼元氏の気になることを書き連ねたという感じですが、色々と面白いです。
- 地書きの扱いの変遷(排除の方向から、積極利用への変化)
- 回想調一人称と実況調一人称(主人公への感情移入のためには、実況調)
- 全ての絵が用意できるわけではないから、細かなニュアンスを伝えるのは地書きの役割*1
- 「い抜き」を心がける
ちなみに、「い抜き」とは、「わたし今、絵の勉強をしているの」ではなく「わたし今、絵の勉強をしてるの」とすること。「い抜き」をしないと声優さんが演じにくそうにすることが多く、慣れた声優さんだと「わたし今、絵の勉強をしてぃるの」と「い」を素早く喋ってしまう人もいるとか。
予想以上にしっかりした本で楽しめました。まあ、わたしはあまりノベルゲーはしないので、耳年増度が増しただけではあるのですが。
*1:表現方法の多彩さにおいては、映像メディアと文字メディアのいいとこ取りを実現しているとも言えます。とまで言っている。