- 作者: 産業技術総合研究所,産総研=
- 出版社/メーカー: 白日社
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: 単行本
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上の書影にある写真は珊瑚(マイクロアトール)。スマトラ島沖地震の時に土地が隆起して、浅海にあった珊瑚が地上に出てきたもの。この頂上部が隆起前の海面の位置に相当するので、現在の海面と比較すれば隆起量が測定できることになる。(p.180-)
よく知られているように、地震研究について日本は世界のトップレベルにある。そんな世界トップレベルの研究を分かり易く解説してくれているのだから嬉しい限り。(しかも安い。1500円ですよ。)
各研究者が何をどう面白いかを語るインタビュー中心の第一部。具体的な研究内容を解説する第二部以降、の大きく分けて2つの部分に分かれている。大体分かったところで細かい話という構成となっており、ポピュラーサイエンス的な観点からは、この構成は成功していると思う。地質で何を見るのか、衛星写真で何を見るのか、井戸で何が分かるのか、現地に行って何を調べるのか、それらは一体どんな背景があるのか、読んでいて実に面白い。海水が平野部に流れ込んでくるのは、高潮と津波とがある。それの区別の方法とか。岩盤にかかる応力を井戸で測定するとか。(当然ながら、阪神震災のインパクトの大きさも分かる。)
結局の所、地震研究の一番の難しさというのは、地震が数百年〜数万年単位の地質活動に由来するものでありながら、地震自体は数十秒程度で発生する現象である、というところにある。コンピュータシミュレーションにしても、この2つは連続的に繋げることができていないのだそうだ。そして、人類の地震観測の歴史が高々100年程度であるということも、困難に拍車をかける。同じ場所、同じ要因で起きる地震を複数回観測したことが無いということだからだ。
日本で暮らす以上、地震から逃れることはできない。ならば、せめて出来るだけ正しい知識を持っておきたいし、地震研究のニュースも楽しく知りたい(新事実、新学説とかも理解したいじゃないですか、素人として出来る限り)。そんな時のための1冊目として最適だと思う。
というか、純粋に面白いですよ、一般向け科学書として。