- 作者: ジョエルレヴィ,Joel Levy,柴田譲治
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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ネタ本としては面白い。大災害やパニックのネタが多数記述されており、それぞれ、最初の兆しや被害の拡大の仕方なども書かれている。
一方、著者の主な主張であると推測される、「温暖化対策をしない奴は敵だ、資本主義反対、反グローバリズム」(いや、そこまで品のない言い方はしてませんが)については、説得力があるとは言い難い。
多くの事象を並べ立てたせいで個々の記述が薄くなってしまっているという理由もあるだろうが、記述が不充分なところが多い。ネタ本としてなら使えるというのは、ようするに、そういう緻密な議論が必要ないからであって、具体的なアクションを促すのであればもう少し丁寧な議論が必要だと思う。
そもそも、著者がやれて命じているのは、最も効果が大きい対策でも、最も実現可能性が高い対策でもなく、最も自己満足に浸れる対策でしかない。海外旅行をやめて、有機野菜を食べて、環境政党に投票したって、地球規模での大した成果は出ない。あらゆる化学物質に予防原則を当てはめろと言っているのも、リスクを理解していないことの証拠。そしてリスク意識のない環境論は感情論でしかない。そんなことをするくらいなら、原油の値段をつり上げる方がよっぽど効果は大きい*1。結局はシステムをきちんと使っていけるか、なのだ。(もちろん、姿勢や意識も大事。でも、効果は別。)
まず、致命的天災を先頭に持ってくる方がよかったのではないだろうか。この部分については、オーダーレベルなら、頻度も規模も概ね合意できるはず。そして、残された時間とその間に行わなくてはいけない準備と、その準備の進捗状況を書く。来年、巨大隕石が地球に激突したり、超火山の爆発があるかもしれないが、それは数万年後かもしれない。その幅も含めた書き方のフォーマットをここで決める。
同じフォーマットで、戦争、環境、食糧、資源の内容も書く。そうすればスケール感の違いとかも分かりやすくなる。話は小さいが、時間も少ないということも示せるし。
あとは、発生確率ではなくて準備猶予時間の方が妥当だろう。いわゆるリスク・マネジメントで発生確率を使うのは、マネジメント対象が比較的短い期間に限られているから。数桁異なるものを一緒に扱うのは無茶。
まあ、そうしたところで、書き手の姿勢が恐怖本フォーマットじゃ駄目なんですが。
そうそう、個人的にはAIの脅威やグレイ・グーの危険は過少評価だと思う。まあ、期間の設定があやふやなせいで認識がずれてしまったのだろうけれど。