k-takahashi's blog

個人雑記用

日本SF・幼年期の終わり

日本SF・幼年期の終り―「世界SF全集」月報より

日本SF・幼年期の終り―「世界SF全集」月報より

 ハヤカワの世界SF全集に織り込まれていた「月報」掲載のエッセイをまとめたもの。帯にもあるとおり、1970年頃の現役関係者の生の声が多数収録されている貴重な資料集。昔図書館で全集を読んだときには、入っていたり、いなかったりなので、こうしてまとまっているのはありがたい。(のだが、どうせなら全部収録して欲しかった。)


 最初の「ハックスリイ/オーウェル」巻はなんと3万部近く出たそうで、まずそれにびっくり。
 1970年頃だから、アポロ11号とか万博とかそういう頃。いわゆるニュー・ウェーブ直前だったこともあるのか、なんとなく路線的にはそっち系が多いのが時代を感じさせる。そんな中で、「スペオペってやっぱり凄いものだ」と書いている福島正実のエッセイは、出版側での苦労がにじみ出ていて面白い。
 一方で、変わっていないのがSFファン気質というもの、そして具体的な予想はほとんど当たらないものだな、とも。

 あとは英語圏以外のSFについては、情報収集の苦労話がたくさん。ソ連SFに至ってはギャグにしか見えない。計画経済だから本もまず予定が発表されてそれから出る。で予想通りこの予定は守られないし、おまけに計画に乗っていなかった本まであるとのこと。ううむ。


 石原藤夫先生がチャペックの号に寄せた文章でロボットについて語っているのだが、その中に北米の送電システムが含まれているのに驚いた。1970年ですよ。さすが石原先生。