k-takahashi's blog

個人雑記用

千葉大学ロボット憲章

 先月おちょくった文章を書いたのですが、(http://d.hatena.ne.jp/k-takahashi/20071128/1196258292) そうしたら、本物かどうかを確認する方法は無いのですが、現場の方からコメントを頂いてしまいました。こういうところはウェブのありがたいところ。折角ですのでまじめな話も。

まずは、コメントを再掲載。

現場の人 2007/12/19 21:21
若干タッチしましたので、コメント。もともとの工学者側からの起草文面は「悪用防止技術をロボットに組み込むことを心がけるで」あったと記憶がありますし、アシモフのロボット工学三原則は参考文として、別記すると言う素案であったと思います。御指摘の通り、専門家側では(私は専門ではありませんが)当然あれこれ考えた起草案でありましたが、大学組織は大きく、工学研究者ではないトップグループの判断で、文章がさらに練られた(?)ようです。その結果、「第3条」と「第4条」が既に、あるいは今にも実現出来るような不遜な(?)文になったと私も一寸驚いています。ただ、現場では他大学に比べて余り知られては居ないかと思いますが、世界をリードする研究の守備範囲があり、実際に様々なところからオファーも来ているようですし、研究者の側で本当に規範を制定して欲しいとの希望が出る状況でありました。世界の情報網はとても早いのですね。御参考までに。なお、1月23日に千葉大でMAV(Micro Air Vehicles) & UAV/UV (Unmanned Aerial V. & U.V)の国際シンポジウムが開催されます。Prof.C.Ellington(UK), Prof.W.Shyy(U.Michigan), Prof. R. Lozano(CNRS), Prof.R.Siegward(ETH Swtz.)の4特別講演も含めてMAV/UAV/UVの先端テーマの講演が聴けると思います。無料ですので、もしよろしければ御興味のある方は御参加下さい。

 千葉大が色々研究をやっていたのは知っていました。ROBODEX2002で地雷処理ロボットを見たのを憶えています。なので、千葉大工学部のロボット研究のレベルが低いとかそういうことは思っていませんでした。念のため申し添えておきます。


 憲章みたいなものを設けるのも別に構わないと思います。ただ、この憲章を読んだときに(私は、サイエンスライター森山和道氏の日記(http://www.moriyama.com/diary/2007/diary.07.11.htm#diary.07.11.28)で知りました)、「なんじゃこりゃ?」と思ったのは事実です。理由は2つあって、まず第3条(千葉大学におけるロボット教育・研究開発者は、非倫理的・非合法的な利用を防止する技術をロボットに組み込むこととする。)を読んで、「これを書いた人物はエンジニアではないな」と。そして、第4条(千葉大学におけるロボット教育・研究開発者は、アシモフのロボット工学三原則(注)ばかりでなく、本憲章のすべての条項を遵守しなければならない。)を読んで、「これを書いた人物はアシモフを読んでないな」と、ストレートに感じたのです。3条を書いた人間が、工学的観点から知能について考えたことがある人物とは思えないですし、アシモフを読んでいれば三原則の抱える諸問題や第0条を知らないはずがない。分かっていない奴が偉そうな御高説を押しつけてくるのに対して敏感にそれに気付くことについては、ご同意いただけるでしょう。
 で、まあ、そこをとっぱらい、中身のない1条と5条(5条もそうとう問題ある文だとは思いますが)を取り去ると、残りが2条。ああ、なるほど。そっち系の人が適当なこと言ってるんだろう、と思ったわけです。


 そして、今更ながらですが、私は2条も問題だと思っています。地雷処理ロボットに軍事・民生の区別があるとは思えないですし、知能ロボットの研究をするのに、DARPAグランドチャレンジを無視するわけにも行かないでしょう。DARPAは明確に軍事組織ですが、DARPAの研究を軍事目的と言い切るのも中々難しい。物陰に隠れた人を探知する技術は、軍事用にも災害救助用にも使えますが、それを研究レベルでうんぬんするのも無意味。
 もちろんそれは常識ですが、そっち系の人達には往々にしてそういう常識が通用しないわけです。宇宙開発が非軍事目的という言葉で逆にへんな縛りをうけてしまった例もありますし、松下に「パソコンは兵器だから回収しろ」と要求したり(http://www.kojii.net/opinion/col060501.html)と。常識外れもいいところですが、そっち系の人達にはそもそも常識は通用しないんです。そういう人達に介入の口実を与えるような文章は、非常に危険だな、と。


 もちろん、私の考えすぎであればよいですし、千葉大の研究者が直接軍事ロボットを作ることもないだろうとは思いますけどね。