k-takahashi's blog

個人雑記用

月曜日は魔法使い

月曜日は魔法使い (HJ文庫G シ01-01-01)

月曜日は魔法使い (HJ文庫G シ01-01-01)

 読んでいて苦笑が耐えない滑稽な本であり、D&Dを知っている人なら間違いなく笑える(爆笑か苦笑かは人による)一冊。


 なのだけれど、正直桂さん等翻訳チームの意図が読めない。いったい、どういうつもりで本書を訳出したのだろう?
本書の面白さというのは、American girls' life と D&D culture のギャップから生まれているわけです。衝突するにせよ、すれ違うにせよ、そこがおかしさの源。私がどう読んだかというと、D&Dならある程度分かるから、D&DをベースにしてAmerican girls' life を見るわけです。一方、原書が想定している主たる読者層はAmerican girls' life をベースにしてD&Dを見るわけです。これはいい。
 ここで、分からないのが、この「翻訳書」はいったい誰に読んで貰うための本なのか、というところ。それが、日本のゲーマーなのか、これからリクルートしたい予備軍なのかが、どうにも分からないんです。

 例えば、訳注。ピーリングとストーム・トルーパーとの両方に注が入っている。若い女性に読んで貰いたい本ならピーリングの解説は不要だし、ゲーマーが相手ならストーム・トルーパーは説明不要。「フェリシティの青春」には注があるのに「バフィー」は注無しというのも分からない。

 日本の若い女性が本書を読んだとして、ギャップを把握できるのか、もしかしたら両方分からないのではないか、と。セレブがどうの、ショッピングがこうの、芸能界がどうしたの、という辺り、通じるんでしょうかね。


 一方で、日本のリプレイ本からは良くも悪くも「作った観」を感じることが多いですが、本書のリプレイシーンは「身も蓋もない観」があります。ドラゴンランスのような小説として完成させたもの以外のリプレイって北米ではこういうものなんでしょうかね。こういうところは面白かった。(動物愛護がどうこうと理屈を振り回して、ヘルハウンドに襲われた仲間を見殺しにしようとするところなんか、私がマスターなら、プレイを諦めていると思います。本書に出てくるマスターは偉大だ。)

 一応、D&D自体の入門書でもあります。一通りのルールや考え方は紹介されています。


 本文中に何度か出てくる "Dungeons and Dragons for Dummies"は http://www.dummies.com/WileyCDA/DummiesTitle/Dungeons-Dragons-For-Dummies.productCd-0764584596.html こんな本です。たしか、何年か前のロール&ロールにもちょこっと紹介されていたような気がする。どうせなら、こっちを先に訳せば良かったのに、とも。(斜め読みだけしかしたことがないので、どのくらい分かりやすいかは不明)


 ちなみに、著者のページはこちら(http://www.shellymazzanoble.com/)。本書中のイラストは、当人に似せて描いたのかもしれないですね。

2008/05/05 追記

 コメントを頂いたまりおんさんの評はこちら。http://d.hatena.ne.jp/mallion/20080407/p2
 昨年夏のワールドコンのレポートとかを読む限りでは、女性オタクのはじけっぷりは日本の方がアメリカより上かもしれない、と思っています。