k-takahashi's blog

個人雑記用

ストーリー問題

 コマンド81号の徳岡正肇の「PC Simulation Games」のお題は「Portal」。Portal自体の紹介は良いとして、徳岡氏はPortalで語られるストーリーについてこんな解説をする。

 「ゲームでは、Story-story(ライターが創作した物語)とGameplay-story(ゲームを進めていくうちにプレイヤーが体験していくこと)の間には、必ず大きな溝があるのです。」
 このデルタ(溝)を狭くするほどゲームは面白くなるというのがこの”理論”であり (p.68)


 徳岡氏は、この「デルタ理論」がシミュレーションゲームにおいて

ヒストリカルシミュレーションゲームでは、HistoryとGameplay-storyの間には、必ず大きな溝がある」
「過去に、Historyに押しつぶされて失敗した作品は幾つもある」

と読み替えることが可能であり、それが「高梨パラドックス」に他ならないと指摘する。


 更に、この理論が「原理的にはStoryを巡るゲームであり、どのようにして物語を解体・再構築し、それを共有していくか」というゲームであるTRPGにおいても適用されることを指摘している。そして、

TRPGもまた、Story-storyとGameplay-storyに関わる問題を重篤なレベルで患っている世界ではあるが、少なくともTRPGゲーマーはそこに問題があることを、きわめて原初の段階から意識しており、解決あるいは改善のための努力が積み重ねられてきた。その努力に結果が有意に機能しているかどうかはともかく、そこにそれだけの蓄積があることは間違いない。(p.69)

とまとめている。(徳岡氏はWoDの翻訳に関わっていることからも分かるように、TRPGの造詣も深い。)*1


 3者(コンピュータゲーム、SLGTRPG)の違いを述べるのは簡単ですが、「Storyを巡る」という観点でこれらを統一的に見ることができる、つまりどこかで行われた解決策は別のところで活用可能かもしれない、という知識は、持っていて損はしないと思う。

*1:もっとも、そのはずのTRPGが、この問題に名前を付けていないところは妙ではある。だからこそ「有意に機能しているかどうか」と保留されてしまうわけだ