k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究2008年9月号

軍事研究 2008年 09月号 [雑誌]

軍事研究 2008年 09月号 [雑誌]

 記事を書いているときにはグルジア問題が発火するとは思っていなかったであろう「ロシア国防・安全保障の人物・権力相関図」(小泉悠)がタイムリー記事になってしまった。
 軍、大統領(メドヴェージェフ)、首相(プーチンとシロヴィキ)という三勢力の関係を理解する必要がある、というのが著者の見解。ちなみにシロヴィキというのは、武力省庁出身者のことでプーチンの勢力下にある人脈ネットワークである。直接・間接を合わせると高級官僚の4分の1がシロヴィキという分析もあるらしい。そして、シビリアンコントロールは確立せず、シロヴィキ経由という「人治」による軍統治が続くという見方をしている。
 さらに、プーチンは、バルエフスキー前参謀総長(彼は、欧州への先制核攻撃を口にしたことのある強行派)経由で軍をコントロールしようとしており、そのため対欧米強硬路線を容認するかもしれない、としている。
 グルジア問題で、ロシアが必要以上に強硬な態度を取っているのは、この辺の理由があるのかもしれない。


 米空軍の混乱を示す「揺れるアメリカ空軍」(野木恵一)では、装備開発調達関係の懸案として、次期空中給油機と戦闘捜索救難ヘリの選定が混乱していることが指摘されている。F−35も遅れているから、この辺は大変そうだ。野木氏は、調達のもめ事が多いので、空軍長官の地位は任期が無さそうだと書いている。


 良くも悪くも浮いた感じの記事を書く嘉納愛夏氏。今回は6月の宮城内陸地震への自衛隊災害派遣取材記事を寄せ、被災者のメンタルケアに駆り出されている場面や陸空連携がそれなりに進んでいる様子などを伝えている。
迷彩服が景色に溶け込んでしまうため、民間人が重機で作業するときに危険かもしれない、安全面からも広報面(写真に写ったとき、自衛隊員が目立たなくなる)からも、一工夫必要ではないか、という指摘は取材記者らしい。


 あとは、神奈川県警が「タロン4」という爆発物処理用ロボットを導入したという記事もあった。(p.119) 米軍がイラクでも使っているロボットなのだが、神奈川県警が入手していたとは知らなかった。