安田氏が、翻訳家でありながら同時にデジタル/アナログゲーム問わず、英米の「SFファンタジィ的想像力」を精力的に紹介した、オールラウンドな活躍をしていた1980年代が確かにあったということを、この本は教えてくれます。
当時は『ウィザードリィ』や『ウルティマ』が、『D&D』や『トラベラー』や『ルーンクエスト』と分け隔てなく論じられる時代があった(少なくとも、安田さん自身にとっては)。そのような議論ができる“空気”を色濃く残した本として、この著作は読まれるべきなのかな、と。
安田均『神話製作機械論』 - God & Golem, Inc.
内容的にも時期的にもかぶるのですが、
幻夢年代記―コンピュータ・ゲームの世界 (Login Books)
- 作者: 安田均
- 出版社/メーカー: ビジネスアスキー
- 発売日: 1989/08
- メディア: 単行本
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あと、神話製作機械論と同じ頃に同じBNNから出た
- 作者: 畑中佳樹
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ
- 発売日: 1987/10
- メディア: 単行本
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キャラの成長の有無で分けるのが簡単だったのですが、ここで問題なのが当時安田先生が「トラベラー」の翻訳をやっていたこと。トラベラーはゲーム中にほとんど成長しません。しかし、トラベラーをRPGと呼ばないわけにはいかない。一方で、そうしようとするとコンピュータゲームのアドベンチャーとRPGが混ざってしまうというわけです。実際、D&DをRPG、トラベラーをアドベンチャー、と呼ぼうという話はあったんです。
コンピュータゲームの側では、いまでも明確な区別はないのでしょう。境界線上にあるゲームは多いですから。
非コンピュータゲームの側だと、行動の自由さが違うというように説明されることが多かったと記憶しています。ゲームブックやボードゲーム、カードゲーム、一般のシミュレーションゲームは、あらかじめ準備された選択肢の中から行動を選び、あらかじめ準備された結末のどこかに行き着くのに対し、RPGは自由に行動を選び、結末も多様である。それこそがTRPGを他のゲームと区別する重要なポイントだ、と。
オールドゲーマーがTRPGの「自由」にこだわる理由の一部は、こういう歴史的経緯にあるのかもしれないです。