- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: 雑誌
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人はAIに人権を認められるかという話なのだが、内容が非常に多岐にわたり、しかもきちんとまとまっている。さすがはテッド・チャン。
仮想生物をいじめる話(ラギッドガールにもあった)や、電子ペットを看取る話などはよくあるが、ロボットが愚行権を主張するところがなんと人間との性的関係を持つという話題。表現検閲強化の話が出ている昨今、統制派の人がこんなものを読んだら何をいいだすことやら、とも思った。
プラットフォームの喪失によりお気に入りが使えなくなる話は、Windowsとかのバージョンアップでソフトが使えなくなる話に通じるし、少数の人が先鋭化しつつもプラットフォームにこだわる話はついついモルフィーのことを連想してみたり。
このストーリーではAIにはコピーやリセット加速ができるが、人間にはできないというところが一つのポイントになっている。人間とAIの関係を考えるとき、過ごす時間が重要だと言うことで、ワールドコンで「シンギュラリティは信じない」と言ったチャンの見解からみるとこうなるのだな。
もちろん、ロボットやAIを語ることは人間を語ること。人の意識をコントロールすることとAIをカスタマイズすることの類似性(薬物による精神の制御とAIのパラメータ制御)で、両者の境界に迫るところとか、分かっていても上手いな、と。
翻訳の大森望氏は、ラブプラスを遊ぶ人の「ゲームに飽きてしまったら彼女をどうすればいい」という議論を引用して紹介しているが、本書を読んでいると確かにラブプラスの話がちらちら思い浮かぶ。チャンに、これをどう捉えるか聞いてみたい気もするし、ラブプラスの彼氏達に本書の感想を聞いてみたい気もする。