k-takahashi's blog

個人雑記用

リリエンタールの末裔 〜技術と社会の軋轢の向こうへ

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

昨年の日本SF対象受賞作『華竜の宮』*1の上田早夕里氏の第2短編集。
『リリエンタールの末裔』『マグネフィオ』『ナイト・ブルーの記録』『幻のクロノメーター』の4作を収録。「クロノメーター』は本作用の書き下ろし中篇。
『華竜の宮』の背景世界と同じ流れにある(『リリエンタール』は明確に同じで、他も流れは繋がっているような印象。)せいか、テーマにも流れを感じる。 技術や環境が変わっていったときヒトはどこまでヒトなのか、という課題意識。


技術の進歩だけではなく、環境の変化の影響の取り込みが、うまくSF的な方法論を使っているいうことになるし、SFとしての面白さにも繋がっていると思う。環境の変化によるヒトの変化と向き合うことと、技術の進歩によるヒトの変化と向き合うこととの両方の合体技。外部からの影響を受け入れることと、自ら変わっていくことの対比でもある。
『華竜の宮』の受賞合わせで本短編集を出したのもそういう意味でよかった。


一方で、技術面の描写も楽しくて、グライダー、意思疎通装置、遠隔操作UI、時計、とまた美味しい素材が並んでいる。グライダーの飛行シーンとかいいですよ。

*1:

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)