k-takahashi's blog

個人雑記用

クロノリス

クロノリス?時の碑? (創元SF文庫)

クロノリス?時の碑? (創元SF文庫)

『時間封鎖』*1 *2ロバート・チャールズ・ウィルスンの作品。執筆順だと『時間封鎖』よりも前に書かれたものだが、翻訳はこちらが後になった。

時は近未来の二〇二一年、場所は東南アジアのタイ。ある日突然、南部のチャムポーン県でそれは起こった。何もない山中に、巨大な謎の石柱が忽然と出現したのだ。それは出現するときに巻き起こす衝撃波で周辺を破壊する、恐るべき破壊兵器でもあった。信じがたいことに、この石柱に記されていた言葉によれば、これは二十年先の未来から、謎の存在「クイン」によって送り込まれてきたものだということだった。
 石柱は本当に未来から送られてきたのか。クインとは一体何者なのか。
 一切の謎が解かれぬまま、新たな石柱が一つまた一つと世界各地へと送り込まれてくる。そのたびに破壊される出現地点。それは二十年にわたる長い長い「未来との戦い」の始まりだったのだ。
 偶然、最初の石柱の出現を目撃したアメリカ人プログラマ−、スコット・ウォーデンは、運命のいたずらか、この時の石柱、クロノリスとの闘いに巻き込まれていく……。
(解説、より)


読み終えた第一印象は、「アメリカのTVSFみたい」というもの。ある男が謎の石柱の出現現場に居合わせてしまが、その騒動の中で娘に傷を負わせてしまい、それが原因で離婚されてしまう。
彼は必死に仕事にも励み、再婚した前妻や娘への責任を果たそうとする。
一方で、彼は石柱との関わりを断つこともできず、大学時代の恩師とともに対策に関わることになる。この恩師というのが、非常にエキセントリックな人物で、それにより彼もまた引きずり込まれていくことになる。

なんか、いかにもTVSFシリーズになりそうなんですよね。絵的にもインパクトがあるし、群像劇風に何人もの人物がそれぞれの立場からクロノリスに関わっていく様子とかも。(『フラッシュ・フォワード』とか『フリンジ』とか連想しますよね。)


あとは、解説にもあるけれど、未来との戦い(情報戦というかプロパガンダ戦というか)が長きにわたる中で、各人が変わっていく様子もうまいなと思った。不安と不景気によりおかしくなっていく人々とか、なんか10年前の小説なんだけど、昨今の様子を見るに、変に当たっているところがあるのがなんとも。

繰り返される、偶然と必然、そして不確実性と未来、それらを各人がどう捉えていくか、折り合っていくかというのが人の変化を表現するうまい手法になっている。各人の変えられない過去、様々な偶然と必然による結びつき、未来からの干渉。まあ、時間ものの醍醐味ではありますが、ここが長期間というのが本作の特徴の一つ。


物語の大きなポイントの一つは「クイン」とは誰かということ。当然、主要な登場人物の誰かだろうというのは当然の予想なのだけれど、そこをきちんと納得いくように書いて貰わないと困る。そこもうまくまとまってました。

以下、ちょっとネタバレあり

未来との戦いに一区切りがつき、再び人々が自分たちの未来の可能性に向けて活動するシーンがある。ここで使われているのが、宇宙開発でありSETIである、というのが、嬉しいですよ、やはり。

*1:

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

*2:

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)