k-takahashi's blog

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ナチスの発明 〜ナチスは本気で人民のユートピアを考えていた

ナチスの発明

ナチスの発明

ナチスの科学は世界一!」と言えばジョジョの名言(迷言?)だが、実際ミリオタ的には、ナチスが先進的だったものが幾つもあることは知られている。ジェット機、V1/V2、ヘリコプター、ツェッペリンなどなど枚挙に暇が無い。他にも技術的には、人造石油や合成ゴム、テレビやラジオでも先進的だった。アウトバーンフォルクスワーゲンもそうだ。
もちろん、得手不得手の問題や少々進んでいただけだという見方もできなくはないが、それでも技術先進国の一つであり、様々なものを作り出したのは事実である。

技術面だけではない

実は、ナチスの発明は技術面に限ったものではなかった。上述のフォルクスワーゲンが「大衆車」というコンセプトで始められたものだが、それ自体はフォードと同じである。だが、ヒトラーは分割支払制度を用意した。週5マルクずつ4年間払い続ければワーゲンが手に入るというものだ。これに30万人以上が応募したと言う。

あるいは、「労働者には長期休暇が与えられなければならない」というコンセプト。ヒトラーは「金持ちの特権の打破」を訴えたが、それを「金持ちがしていることを労働者にも」という方向で実現したのだ。バカンスだけでなく、海外旅行、観劇、テニス、スキーなどが労働者の手の届くものとして提供された。歓喜力行団というナチスの娯楽団体が企画した第一回の海外旅行はルールの炭鉱労働者達が参加したそうだ。国内の景勝地には格安で使える宿舎も用意した。


また、育児支援アスベスト対策、扶養控除、八時間労働の法制化、女性の社会進出などもナチスが世界に先駆けて実施したものである。


人気取りと言えばそれまでだが、それでもこれだけのことをやったのは事実である。そこを否定するのは不公平だろう。レニ・リーフェンシュタールの功績が「ナチスに協力した」というだけの理由で長い間否定されてきたが、映画としてのできは確かである。同様にナチスのこれらの施策も、政策としてはきちんと評価するべきだと思う。
ナチスヒトラーも、本気で理想社会を作ろうとしていたのだ。


但し、彼らが作ろうとした理想社会がある意味でいびつなものだったの事実。その両面をきちんと見つめておくことが、歴史から学ぶということなのだ。というのが本書の趣旨だろう。面白エピソードを読むだけでも楽しいが、そちらも頭の片隅に置いておく必要がある。

補足

なお、記述については、ところどころ言い過ぎや脱線気味のところもあるように思う。学術書ではないとはいえ、適宜取捨選択するということで。