k-takahashi's blog

個人雑記用

シンギュラリティは近い 〜指数関数的な変化

人類の進歩は指数関数的なものであり、線型的なものではない、ということだ。
さらに、特異点の意味するところは、指数関数的な成長は魅力的で、最初の動きはゆっくりでほとんど目立ったところはないが、曲線の折れ曲がり地点を過ぎると、爆発的に増大しグラフの形が一変するということだ。未来は、全く誤解されている。我々の祖先は、未来は現在によく似たものだろうと考えた。
(No.305)

私の知る人のほとんどは、未来を線型的に見ている。このせいで、短期的に達成できることは必要以上に高く見積もるのに、長期的に達成されることを必要以上に低く見積もってしまう(指数関数的な成長に気付かないから)
(No.402)


カーツワイルの2005年の本の和訳。先日Kindle版が出たので購入。単行本だと700ページ以上あり、KindleでもNoが1万2000以上ある。移動時間はほぼこれを読むだけでといった感じでした。


TEDにビデオがありました。この人です。


内容の大半は、シンギュラリティの実現に向けて現在どこまで技術が進んでいるのかの膨大な実例紹介。なんと、最後の20パーセントが原注にあてられていて、その大半がそういった事実に関わる引用紹介。
もちろん、すでに10年近くも前の本なので、細かい部分ほど古びており、もっと進んだところ、停滞しているところ、否定されたところなど様々。
でも、物質そのものを計算機械にして、コンピューティングパワーを計算するところとかは今でも面白い。


しかし、本書の価値は「テクノロジーが加速するという事実とそれを我々が見誤りがちであるという事実」、「この両刃の剣を我々はどうやって扱うか」ということについての考察にある。ここは全く古びていない。この部分だけなら、1章、2章、8章を読めば良い。
シンギュラリティというとSFの話のようで、ポストヒューマンテーマとも密接に関わっている旬なテーマである。但し、「本書はSFではない」。そこはくれぐれも。

幾つか話題

物質そのものを計算機械にする話題は上で触れた。情報を消す時にはエネルギーを熱として排出しなくてはならないから可塑的なコンピューティングではエネルギーの放出は最低限になる、とか煙に巻かれた様な気分になれます。


他にも、収穫加速の法則から見てフェルミパラドックスの解は「人類が先頭だから」となり、そこを人間原理で裏打ちする部分とか、「人間の限界を賛美する理由は思いつかない」(No6734)とか、SF脳から見ても面白い話題が色々と。


シンギュラリティを迎えるための心構えとしての以下の部分も興味深いと思った。

モアはまた同時に、特異点を予期することで、目下の課題に取り組み姿勢が受け身になりかねないという懸念を表明している。長年の問題を克服する途方も無い可能性が見えてきたので、今日の足下の懸念については傍観しようとする傾向が現れるかもしれないというのだ。
(中略)
テクノロジーというものは諸刃の剣であり、特異点に向かってうねりが高まるにつれ、予想しなかった方向に進み、ひどく悩ましい結末を迎える可能性をはらんでいる。未来技術の導入がわずかに遅れただけでも、幾千万もの人々が苦痛の継続を宣告されかねない
(No.8343)