k-takahashi's blog

個人雑記用

ゲームストーミング 〜ブレストだけではない

ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム

ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム

ゲームストーミングとは

KJ法とかワールドカフェとかの、クリエイティビティを活発化させるための方法論を集めた一冊。ちょっと紛らわしいですが、最近はやりの「ゲーミフィケーション」とは別のものと考えた方がよいと思う。
ゲームが「ゲーム空間」「境界」「ルール」「道具」「ゴール」から構成されると言った捉え方は共通だけれども、本書の目的は

ゲームストーミングの目的は、ビジネス上の難題の検討・分析のために、協調体制の強化のために、そして世界がどう機能し、そこにどのような可能性を見いだせるかが斬新な洞察を得るために、ゲームの世界を創り出し、その世界を探索することです。(p.5)

となっている。なので、実は上記のゲームの構成要素のうち「ゴール」については、

知識労働ではゴールは曖昧でなければなりません。
ゲームストーミングは従来のビジネスプロセスに代わるものです。ゲームストーミングではゴールが明確でないため、チャレンジスペースにどのようにアプローチすれば良いか、前もって計画することも、十分に予測することも出来ません。
ビジネスプロセスが原因と結果の確実でゆるぎのない連鎖を作り出すのに対し、ゲームストーミングは別のもの、すなわち連鎖ではなく、探査、実験、試行錯誤のための枠組みを作り出します。ゴールまでの道のりははっきりせず、しかもゴールさえ変わってしまうかもしれません。(p.6)

と捉えろとしている。オーソドックスなビジネスプロセスの方法論ではうまくいかないものに対応するための方法論集が本書ということ。


なので、ブレストとか整理法とかの延長だと思えば良い。そのための具体的なアイディア(ゲーム)が多数紹介されているし、そして本書の特徴は、そういったゲームを作り出すための枠組みを解説しているところ。(2章と3章。)
枠組みを理解することにより、ゲーム(アイディア)が形式主義や惰性に流される危険を防ごうとしている。もちろん、ある程度強制的な枠組みで動くことが固定観念から逃れるためには重要なのだけれど、それが別の固定観念に移るだけでは意味が無い。その意味で、枠組みの解説は重要なのだ。


ファシリテータとか職場活性化とかを担当することになった人や、あるいは一人ブレストをする際のヒントにも最適な一冊。そういうときは具体的なゲームのところから探せばよいと思う。
ゲームも、「主要なゲーム」「開幕のためのゲーム」「探索のためのゲーム」「閉幕のためのゲーム」とグループ分けされている。このグループを見れば分かるが、大きなゲームストーミングの枠組みとして「開幕・探索・閉幕」という構造が推奨されていて、それぞれどから始めるか、どうやって発想を広げるか、どうやって話をまとめるかに対応する。単独でやっても良いし、3種類を適宜組み合わせることもできるという案配。

枠組みの部分で面白いと思った指摘

一番大事なのは、「開幕・探索・閉幕」というフレームである。頭のモードを切り替える必要があるからで、そのためにゲームも違うものを用いる。ここでは、ゲームの定義にある「ゲーム空間」「ルール」といったことが大事になる。この枠組みを間違えると、始まらない、つまらない、終わらない、という駄目なゲームになってしまう。

人間はパターンを見つけるのがうますぎて、一度見つけてしまうと他の見方をするのが難しくなります。(p.25)

ゲームストーミングによるアイディア活性化を図る際、ゲームの枠組みに強制的に入り込む必要がある理由がこれ。たがを外すために型を使うのだ。


「視覚的アルファベット(p.42)」というのが書かれていた。12種類の基本的な形を組み合わせて絵を描くというものだが、

伝えようとする内容が何であれ、その意味を全て絵だけで伝えなければならないわけではありません。これがスケッチと視覚的アルファベットの重要な違いです。(p.43)

絵が下手だという人も字は書けるはずだ。ならば、という考え方。

この延長で人の書き方というのも紹介されていた。UMLで言うところのスティックマンなら私でもかけるが、もうちょっとコツが説明されている。
「まず、体の角度」、「次に、地面を表す線と足と脚」、「手は線と小さな丸」、「頭の角度は体とは違うはず」、「最後に顔。顔文字でよい」
こう説明されると、視覚的アルファベット同様、絵ではなく文字と同じ流儀でかけることが分かる。


こういう感じで、非常にロジカルにゲームの枠組みが解説されている。


具体的なゲーム紹介から

親和図

おなじみKJ法
ここには、オプションとして「一度分類を終えたら、付箋をシャッフルして再度挑戦する」というのが書かれていた。なるほどと思った。

カバーストーリー

未来像を雑誌や新聞の見出しで表現するゲーム。
日本だったら「プロジェクトXのフォーマットで」とするのがよいのかも。

トレーディングカード

自己紹介カードを作って回覧するゲーム。
アイスブレークのゲームとして紹介されていたが、ブースタードラフト的にカードを集めていって、進行役が提示したトラブルに手持ちのカードを使って対応する、という拡張もできそう。

SWOT

言わずと知れたビジネススキームのSWOT分析
本書ではコツとして、「マイナス要素であるはずの弱みと脅威を肯定的に捉える独創的な作業へ」とか、「弱みは改善できるもの」「脅威は向上のきっかけ」と捉えるとかいうことが書かれていた。弱みが自己否定や他者攻撃と捉えられがちで分析が甘くなることの対応のようだ。