k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究2012年11月号

軍事研究 2012年 11月号 [雑誌]

軍事研究 2012年 11月号 [雑誌]

最先端防衛技術の研究と装備品の創出

防衛省の先進技術推進センターセンター長の景山氏の寄稿。組織と活動の解説をしている。11月のシンポジウム(一昨年のガンダムで急に知名度が上がったあれ)への案内でもある。

シミュレーション技術、化学・生物兵器の感知技術、ロボット、マイクロミサイルなど。

マイクロ/ミニチュア無人

石川潤一氏の記事。兵士一人でも使える小型の無人機について。本当に小さなものが多く、AV社(エアロバイロンメント)のワスプが121g、ハミングバードに至っては19g。


実際小型機の方が数は多く、米国の2012年度予算では無人機が約1000機要求されているうちの900機がRQ-11レイブン。重量は約2kgで上述のミニチュア機よりは重く、一人では運用できない。一機あたりのコストは約10万ドル(ここには遠隔装置などの補助システムを含めた一機あたりのコスト)とのこと。

広がる無人航空機ビジネスとその影

こちらは阿部琢磨氏の記事で、採用の広がり、ビジネスおよび影響力の拡大を目指した米国の規制緩和(1987年4月の「ミサイル技術管理レジーム」による規制の問題)、現在の課題などを整理している。
氏は現状の課題として、「運用維持コストの増大」「テーラメード化によるコスト上昇」「操縦システムの非統一による運用コスト」「搭載機器の高コスト化」「信頼性耐久性」などを指摘している。実際、MQ-9リーパーとF-16を比較すると兵器搭載量あたりのコストはリーパーの方が高いのだそうだ。
最後に、UAVが戦車のような当たり前の兵器になるか、地雷のように非人道兵器のレッテルを貼られるかは、分からないと指摘している。


もっとも、

 レバノンイスラムシーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師は11日、テレビ演説し、イスラエル軍が6日に同国領空で撃墜した無人機はヒズボラ偵察機だと認めた。中東の衛星テレビ、アルジャジーラなどが報じた。
 ナスララ師は「占領下のパレスチナ偵察機を飛ばすのは当然の権利」と述べ、今後も作戦を続ける考えを示した。無人機には爆弾なども搭載できるとしている。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/121012/mds12101208130000-n1.htm

で、先進国(というか、アメリカ)にだけ使用禁止を訴えても合理性はないだろうとは思う。

カフカス2012

小泉悠氏による今年のロシア軍演習の記事。カフカス21は戦略演習(軍管区レベル)と位置づけられており、ということは実働部隊よりは指揮管制の側を重視した演習ということになる。
なお、記事中では

今回の「カフカス2012」は「平地の草原地帯」での作戦を想定しているとしていることから、実際はグルジアとの国家間戦争を想定しているものと思われる。(p.66)

と演習のターゲットを推定している。


指揮管制ということで、戦術レベル統一指揮システム(ESU-TZ)の利用が注目されたが、ほとんど報道がなく、小泉氏は機密保持のためというよりは、課題が多いからと見ているようだ。

おぞましいシリア内戦

継続的にシリア問題をフォローしている黒井文太郎氏の記事。
反政府側も徐々に兵器を集めつつあるが、まだまだ政府軍側が戦力的には有利であり、当分戦闘が続きそうだと分析している。(西側からの極秘軍事援助については、イスラム過激派の関与の関連で難しいのだろう)


ところで、反政府側勢力についてこんな記述があり、私は知らなかった。

反政府部隊をまとめて自由シリア軍と呼ぶ傾向がある、したがって、シリアで「自由シリア軍」(アル・ジェイン・アル・スーリ・アル・フル)といった場合、厳密にアスアド大佐を司令官とする自由シリア軍を意味する場合と、独立系の反政府部隊まですべて含めてしまう場合と両方ある。(p.111)


また、

自由シリア軍としては、政府軍に奪還されない安全地帯を確保することも望まれる。とくに、トルコ国境エリアで政府軍が入れない地域を確保できれば、軍事的には兵站拠点の確率になり、作戦能力が飛躍的に向上する。(p.116)

とあるが、これはすでに記事の先に話が行っていて、

トルコ南東部のアクチャカレで3日、内戦状態に陥ったシリア方面から飛来した砲弾が住宅地に着弾した。トルコメディアによると、爆発で子どもを含む少なくとも3人が死亡、同9人が負傷した。

シリア方面から砲弾、トルコで3人死亡 :日本経済新聞

とシリアがトルコ領内を攻撃している。これは、おそらく自由シリア軍を狙ったものだろう。

オスプレイ

芦川淳氏の『沖縄オスブレイ配備の裏側』、石川巌氏の『防衛省シンポジウム見聞録』と記事が載っている。
ニューリバー基地の第26海兵オスプリ航空群司令シーモア大佐の

「安全でない飛行機を飛ばすような司令官はいない。私はニューリバー基地の第26海兵航空群(MAG26)の司令官として七個オスプリ飛行隊を指揮下におき、パイロット二百人、その他の要員四百人の生命を預かっている。個人的には六人の子持ちでもある。欠陥機を飛ばしたりするわけがない」(p.196)

というのが、まあそうだよな、と。

軍事作戦におけるコンピュータと状況認識(第3回)

井上孝司氏の連載3回目。今回は指揮管制・意志決定支援というところが対象。
いきなりスプールアンス提督のエピソード(着任早々に大きな海図を用意し、指揮下の艦艇などの情報を書き込ませた)というところから入る(井上氏はスプールアンス好きを公言している)が、リアルタイム処理の重要性、マイクロマネジメントの弊害防止、などとなると一般ビジネスとあまり違いがなくなってきていて、実際、米軍が指揮統制用に使用しているGCCS、兵站分野を扱うGCSS、などの中核にはオラクルが使われているそうだ。
情報共有と秘密管理の問題も民間企業とあまり変わらないなというのも。