k-takahashi's blog

個人雑記用

コマンド 107号

コマンドマガジン Vol.107(ゲーム付)『珊瑚海海戦ソリティア』

コマンドマガジン Vol.107(ゲーム付)『珊瑚海海戦ソリティア』

以前、シドニー「オーストラリア国立海事博物館」(Australian National Maritime Museum)に行ったら、一番大きく扱われていた戦闘が「珊瑚海海戦」だったので、改めてオーストラリアからの視点というのを考え直したことがある。(他に、北極星の細かい解説があったりしたのも、南半球の国なんだな、と。)


さて、本号の付録はその珊瑚海海戦のソリテア。関連歴史記事、そしてメジャーテーマのお約束であるゲーム比較。


史記事では、「空母戦 その試行錯誤」(大木毅)が面白かった。

つまり、しかるべき実力を備えた空母機動部隊が正面からぶつかったのは、太平洋戦争中に五回生起したのみなのだ。
(中略)
こうした希少性ゆえに、空母戦で実行された、さまざまな作戦や戦術、あるいは試行錯誤の意味も今なお検討し尽くされたとはいえず、近年になっても、あらたな発見、あらたな考察がなされている。(p.30)

というのには納得。
本記事では、二重索敵線の効果、通信筒連絡、ミッドウェーでの米空母存在を日本が知っていた説、などを扱っている。最後のは、第六艦隊が米空母と艦載機の通信を傍受していたというもの。まだまだ事実と確定するには弱い説のようだが、大木氏がとりあげる以上、全くの妄想ということでもなさそう。そして、これが本当なら、そういう要素を取り込んだゲームもまたありえることになる。


「魁 コマンド士官学校」は、ソロプレイ指南。

まず、史実に沿った作戦をとって負けてみる。次にダイス目最悪の結果ソロをやって負けてみる。(p.55)

特に一つ目の方は、「そんなことを対人でやってもしょうがない」、しかし「ゲームの構造と作戦の基礎を理解できる」ということで重要ということ。
また、

一度作戦を史実通りに固定して進めてみると、局面局面で「いやこうしたらいいのに」という場面が出てきて、それでも史実通りやるか、それとも出現した局面に乗じるか、という、命令に縛られた軍司令官の立場を追体験できてまた別種の楽しみ方もできる。(p.56)

ともあり、ソロプレイ作法として面白かった。


野獣げぇまぁも、この「史実を勉強しておく」ことがシミュレーションゲームを楽しむコツだという前提をおいたうえで、それを伝統芸能を楽しむことの敷居の高さになぞらえて論を進めていた。

物語の楽しみが、「これからどうなるか分からない」を楽しむといった方向に絞り込まれてしまうと、物語を楽しませようとした途端に「物語を生成する」必要が発生する。これはTRPGにおいてはゲームマスターの負荷となり、ヒストリカルシミュレーションゲームにおいては大局的なレベルにおけるゲームロジックの矛盾を発生させてきた。
だがここまで見てきたように、物語の楽しさは必ずしも予見不可能性にのみあるわけではない。既存の物語を辿ることでも物語ならではの楽しさを得ることは可能であり、ヒストリカルシミュレーションゲームにおける物語は主にこの路線で実現されてきた、そしてこの路線ならではの問題を抱え込んだ。(p.63)