冒頭の『神星伝』(冲方丁)が、厨二病的ラノベのりまっしぐらな短編で、まず大笑い。40ページ強なのだが、ラノベならゆうに一冊分のネタが入っている。
『楽園(パラディスス)』(上田早夕里)と『あの懐かしい蝉の声は』(新井素子)がテクノロジー小説。
『楽園』は、知性や意識の範囲の拡大の話。本物と偽物の間、現実とARの間、そこに生まれる何かについての話。
『蝉の声は』は、「ああ、こういう風な感じで戸惑っているのか」というのが腑に落ち、情報洪水の表現として面白い。特に、主人公が若い女性なのでギャップが際立つ。上手いものだ。
『宇宙縫合』(堀晃)は、自分の死体と対面するというタイムパラドックスネタで始まり、最後は大ネタへ。前半部分なら普通の小説でも書けるけれど、後半の大ネタはSFならでは。