- 作者: チャイナ・ミエヴィル,日暮 雅通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 113回
- この商品を含むブログ (106件) を見る
そんな無茶な設定の都市で殺人事件が起こる。主人公はこの事件を担当するウル・コーマのボルル警部補。死体が見つかったのはウル・コーマだったからだが、殺人が行われたはベジェルではないかとなってくる辺りから話がややこしくなってくる。両国家を行き来するには正しく国境を越えなければならず、そうしなければブリーチ行為だ。ブリーチ行為はあったのか、なかったのか。これにより捜査は全く別の方法をとらなければならなくなる。警察小説には良くあるシーンだけれど、「それは我々が扱うことはできない」というやつだ(ブリーチを取り締まるのは警察ではないから)。
見えているのに自覚できないというトリックはミステリーではポー以来の古典的なもの。これを「見ていたことにしてはならない」と読み直し、さらに警察小説とすることで規定を守らなければならないという縛りを強くする。この縛りの中で進むミステリーとして非常に面白い。
そして、この異常な設定の背景は何かというのを、この設定に逆らう組織の活動を通して解明していくSF的な部分も面白い。異常な設定を犯罪捜査という視点を通してリアルに描写した後の話になるので、不思議なリアリティがある。現実を虚構化すると捉えるなら、半分くらいはホラーなのかもしれない。
ラストはうまくたたまれていて、なにやらアメリカのTVシリーズのプレミア第1話的。この小説、うまく映像化したら、さぞ面白いだろうなあ。