k-takahashi's blog

個人雑記用

アルテミス

 

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)

 
アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)

 

  人類初の月面都市アルテミス―直径500メートルのスペースに建造された5つのドームに2000人の住民が生活するこの都市で、合法/非合法の品物を運ぶポーターとして暮らす女性ジャズ・バシャラは、大物実業家のトロンドから謎の仕事の依頼を受ける。それは都市の未来を左右する陰謀へと繋がっていた…。『火星の人』で極限状態のサバイバルを描いた作者が、舞台を月に移してハリウッド映画さながらの展開で描く第二作。 

 

「火星の人」(火星ダッシュ村)で知られるアンディ・ウィアーの第2作。今回は若い女性が主人公、月面都市でグレーな仕事をこなす彼女は違法だがそれほど悪辣ではない仕事を受ける。ところが、それが予想外の大事件に発展してしまう。

当然、「火星の人」を意識(期待)しながら読むわけですが、その期待は裏切られない。前作はそもそもスタート時点で「どうすんだ?」と呆然とするところから始まり、坦々と断固たる進みをしめす。今作はもう少し軽い感じで始まり、前半からテンポ良くストーリーが進んでいく。後半出てくる政治の話も扱い方はちょっと違ってくる。

でも、火星で生き残るために工夫するのと、悪巧みを工夫するのとは、やはりテイストは似ているし、主人公が見積もりして、計算して、行動するところも似てる。今回もオタクが出てくるのだが、彼らが実に生き生きとしているシーンは、読んでいて楽しい。職務に忠実な人々(今回は技術系だけでなく保安要員の人もでてくる)が、根本のところで筋を貫く生き様の格好良さも共通。

前作は「火星」という圧倒的存在を緻密に扱っていたところがうりだったが、本作は月面都市を成り立たせる技術的・経済的部分を緻密に組み立ててそれが縦横に利用されている。この月面都市の描写も実に楽しい。

 

違法行為・脱法的行為に手を出すにしても、自分たちのコードは命がけで守るし、フロンティアでの生き方なんかは、まあ、もろにアメリカンだなとは思った。終盤は経済と自治の話になってくるが、そこも「アメリカンな開拓史もの」っぽいし。

 

今作も、もう映画化の話が出ているそうだが、小説はともかくハリウッド映画となるとフェミがどうの、未成年描写がこうの、と突っ込まれそうな部分あるけどどうするんだろう?(消毒しちゃうのかな? 「火星の人」の「おっぱい」ギャグも映画では消されてたし)

そう言えば、本作もところどころ唐突に「おっぱい」が出てくるんだが、ウィアーの癖なんだろうか?