http://www.ai-gakkai.or.jp/vol28_no5
特集が2つで、一つは『一人称研究の勧め』、もう一つが『コンピュータ囲碁の最前線』。どちらも色々とケンカ売っている感があって、読んでいて面白い。
『一人称研究』というのは、通常の自然科学の方法論からは少しズレた研究や研究手法の話題。もちろん一歩踏み外せばニセ科学や悪性相対主義にまっしぐらの危ういテーマだけれど、まあ人工知能学会らしいテーマでもある。物語やら、特定の人物やら、芸術作品やらといったあたりの話題も含まれてくる。(「一」というのがキーワードで、地学や生物学には「N=1の科学」みたいなものがあるが、あれをもっと押し進めた考え方みたいなもの、というのが私の理解。)
私は数学は構成的な体系であると考えている。自然数やユークリッド幾何学は自然界に存在するとしてもよいかもしれないが、複素数や(公理系を任意に定めて良いとする)非ユークリッド幾何学が自然界に存在するという主張は私には受け入れがたい。(p.741)
とか出てきて、「?」とか思う人がいる(少なくとも私は思った)だろうけれど、そういう話題が色々。
『コンピュータ囲碁』も、ところどころ「コンピュータ将棋、ダメだね」というノリがあって苦笑モノ。(もちろん、そんな下品な表現はしてません。あくまで、私の受けた印象)
もちろん、技術記事も面白い。10年後頃に来るであろう「その日(Xデイ)」(コンピュータが棋士に勝つ日)に向けて、コンピュータ囲碁にはもう一つか二つブレイクスルーが必要。その経過を楽しむには、いまのモンテカルロ系の技術を俯瞰しておくのも重要ということになる。
SFショートショートは、東野司と小林めぐみ。『AIの就職難』(小林めぐみ)は、人間を追放したAIがサービス提供相手がいなくて困るという、よくある設定だが、SF大会のときの後藤先生とかに振ってみたいオチになっている。