- 作者: 竹内純子
- 出版社/メーカー: ウェッジ
- 発売日: 2014/04/28
- メディア: 新書
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任期を安泰に過ごしたいサラリーマン社長であれば「自分が社長の間は原発を再稼働するのはやめたい」と思うのが普通ではないでしょうか?
(序、より)
陰謀論で頭が一杯の方々は別として、普通なら疑問を感じる点だろう。
「どうして、再稼働をしたがるのか?」という理由はもちろんあるわけで、そこを無視して喚き散らすのは単なる「無責任」「責任転嫁」でしかない。では、その理由は何か?というのを解説する本。
ある程度この辺の問題に目を通していれば、全く新規の話というのは無いと思う。もちろん、きちんと整理して貰えているのは大助かりである。
1974年には、オイルショックを受けて「サンシャイン計画」というのをやっている。後継の計画と合わせて国が投じた予算は1兆4千億円になる。こういったことから解説している。
幾つか引用。
再エネは、温暖化対策としては費用対効果が悪い、と数々の研究結果が指摘しています。特にFIT
(p.55)
補助金を受けて過剰に安くなった電力が、環境バランスに優れた発電を圧迫するという話。
しばしばドイツは再エネで電力を輸出するまでになっている、という評価を見かけますが、不安定な電気を輸出してしまうことで迷惑になっている
(p.63)
生産過剰分を輸出すると問題になる、というのは世界中で何度も貿易問題になっているけれど、実はドイツの電力も似たような状態。
広域大停電が起きた場合の復旧はまず、山間地域の自流式水力発電所を立ち上げることから始まります。これを「種火」として、徐々に近くの発電所を立ち上げていきます。このときも需要と供給を一致させながら行う必要がある
(p.84)
停電復旧の難しさ。ここはスマートメーターで需要側を強制コントロールできるようになれば変わるかもしれない。
一方、この時間がかかるという事実が、長時間停電が人命に直結しかねない冬の電力確保の重要さにつながる。
どちらの比較方法においても、産業用・住宅用共に2000年時点においてはたしかに「日本の電気料金は世界一高い」と言えそうです。しかし、20009年の比較では世界一とまでは言えなくなっています。日本が当時行った小売り自由化などの一連の電気事業改革が、一定の成果をあげたと言えるでしょう。
(p.129)
1995年から自由化は実施されており、21世紀に入ってから効果が出ていた(地震より前の話であることに注意。そして、地震後電力価格は上がっている)。
原子力事故の負担を国が負うことを避けたかった大蔵省(現、財務省)の判定により、事業者が無限の責任を負い、国は「必要と認めるときに支援する」という曖昧な法律になったのです。(p.198)
昨年の消費税増税議論のときにも、財務省の内向き理論は問題になったけれど、ずっとそういう姿勢だったらしい。
他にも、省エネの鍵は建物の断熱性向上にあること(よって、投資支援をするならこちらを重視した方がよい)、なども書かれている。
本のタイトル通り電力システムの話が中心です。「あっち」に行ってしまった人には届かないけれど、真面目に考えるための基礎としてお薦め。