k-takahashi's blog

個人雑記用

Reid テクニック

情報処理学会の2017年4月号に載っていた論文。
「否認している被疑者に犯行を認めさせる」ための古典的な技術に「Reidテクニック」というのがある。それが解説されていた。
「なぜ情報処理学会誌に?」と思うところだが、「認知」の観点からの論文の一部で、このReidテクニックが虚偽に結びついてしまった事例(情報処理の世界だと、False Alarmとか第一種過誤とか言われているものに相当する)を紹介し、そういった誤りを防ぐにはという話題に展開していく。


このReidという技術は「犯行を認めさせる」というところからも分かるように、「自白獲得型」で、事実を追求するようにはできていない。論文中の説明をまとめると

  • まず、取調官が「被疑者が犯人であると信じていることを被疑者に伝える」
  • 次に、取調官が被疑者の受け入れやすい説明(テーマ)を提示する
  • この間、被疑者の反論は認めない
  • 説明後に被疑者の発言が許されるが、取調官は被疑者の発言をテーマに回収する(テーマを維持したままで別の解釈を繰り返す)
  • 反論を否定され続けて被疑者の抵抗が弱まったところで、「二者択一的な質問」を提示する。これはどちらを選んでも犯行を認めるような質問である

というような感じ。
一読して分かるように、犯人であるという仮説を検証する過程がない。論文中にはこのテクニックでデタラメを「自白」してしまったところたまたまそれが当たっていたという悲劇(喜劇)が紹介されていた。


オカルトや超常現象の話を調べていると、人間の認識や記憶、証言がいかに当てにならないかよく分かるのだが、そこにこんなテクニックを使ったらろくな証言は得られないだろうな。


あと、ここまで洗練されてはいなかったけれど、ほぼ同様の手口を使っていた上司が昔いたなあと思い出した。(しかも残念なことにレアケースではなく複数だ)
当時は、「先入観に凝り固まった上に、誘導尋問ばかりで話にならない困った上司」という認識だったのだが、名前がついていたとは知らなかった。ミーティングを強要した上に中身がReidとなれば、確実にパワハラなわけで、憶えておくのが良さそうだ。