k-takahashi's blog

個人雑記用

フィッシュ&チップスの歴史

 

 ローストビーフとかプディングとかと並んでイギリス料理の代表とされる「フィッシュ&チップス」。その歴史を解説した本。

 

そもそも「油で揚げた魚に酢をかける」という料理はギリシア・ローマ時代に遡る保存食の作成方法。加えて「金曜日に魚を食べる」という習慣(金曜日に肉食を禁じるという戒律。魚は肉ではないという理屈)もあった。

但し、イギリスで魚が日常的に入手できるようになったのは17~18世紀頃、そして19世紀に鉄道ができたことで魚の消費量が増大する。「新鮮な魚を揚げてすぐに食べる」というのが一般化していったのがこの頃になる。

ジャガイモの方はよく知られている通り新世界から伝わり、労働者の食べ物として入り込んでいくことになる。

この2つは別々の料理として普及していた(別々の商人が売っていたという記録が残っている)が、19世紀のどこかのタイミングで「合わせて」食べられるようになった。それが「フィッシュ&チップス」。本格的な普及は19世紀末からで、第一次大戦直前には、漁獲高の20%とジャガイモの10%がフィッシュ&チップスになっていたそうだ。

 

1970年代以降、中華料理とインド料理の普及、アメリカ式ファーストフードの普及で徐々にシェアが減少していくが、それでも存在感は残っているし、小規模商店の商品としても重要な位置を占め続けている。

 

「イギリス料理」というイメージが広がる一方で、起源としてはフライドフィッシュはユダヤ移民の食べ物と認識されていた(フライドフィッシュの匂いは、悪いものと描写されることが多かった)し、チップスもフランスかベルギーから伝わったものと考えている。外国産料理の組み合わせがイギリス料理となっていたのだ。

なので、高級料理とか郷土料理ということはなく、フィッシュ&チップスも当初は貧民階級、その後は労働者階級の食べ物と思われていた。フィッシュ&チップス商人には家族経営の小規模レストランが多い一方で、移民の活躍も見過ごせない。といった複雑な経緯も書かれている。

 

いわゆる「伝統料理」ではなく、海外に起源を持っており、移民やユダヤ人との繋がりも強い、にもかかわらず「イギリス料理」となっているというのが、この料理の面白いところ。
労働者階級の料理から広まったところはアメリカのハンバーガーも似たところがあるけれど、ハンバーガーと違って工夫できるところが少なく、「高級フィッシュアンドチップス」というのもあまり見かけない(昔、英国王室向けのフィッシュ&チップスというのを見たことはあるけれど)