k-takahashi's blog

個人雑記用

未来を実装する

 

 新技術を普及させることを「社会実装」ということがあるが、その社会実装のベストプラクティスを解説した本。帯にあるとおり本書の視点は、「イノベーションを活用できるように『社会を』変える」というところにある。

そのためにはどうすればいいのか?
本書では、「まずインパクト(ビジョン)を考え」、「リスク対応(マイナスへの対処)の仕方を定め」、「ガバナンス(秩序)の仕組みを整え」、「社会にセンスメイキング(腹落感)してもらう」というやりかたを進めている。それぞれについて考え方・事例・ツールを丁寧に説明しているのでちょっとボリュームがあるが、「ああ、なるほどそういう風に整理するのか」という意味で、それこそ腹落感のある一冊となっている。

 

全体に非常にお行儀の良い本なので、サラリーマンが提案を考えるときに使ったり、準公的な場向けの説明準備に使ったりするのには向いていると思う。特に日本だと、「脚を引っ張ってやろう」という連中が多いので、結局こういう地味なやり方の方が早くなるというのはあるだろう。(やり方自体への反発が少ないだろう)。

 

全体をその通りに使うのもいいけれど、自分にとって「腹落感」のある部分をまず使うのがよいと思うので、まずは一度通読するのをお薦め。

 

 

以下、自分用メモ。

 

課題は問いを見つけるためには、理想を定める必要があります。良い問いを「見つける」というよりも、優れた理想を設定することで、良い問いを「生み出し」、理想を「提示する」ことで人々を巻き込むのです。そしてこの理想が、今注目される「インパクト」と呼ばれるものです。(No.434)

マクロな観点ではビジョンや予測ありきで社会の構造を変えつつ、ミクロなサイクルでは従来のリーンスタートアップなどの方法論を使って顧客のデマのの仮説検証のサイクルを回しながら現実に適応していく。この両輪を回していくのがこれからのスタートアップの必要な動き(No.644)

デマンドがある前提でさらに、残りの四つの要素「インパクト」「リスク」「ガバナンス」「センスメイキング」を考える必要(No.1787)

ビジョンやインパクトが十分に納得度の高いものでないと、変化への抵抗を越えられず、変革は成し遂げられない(No.1882)

長期的な成果に目を向けることで、短期的な費用便益(コストベネフィット)のバランスの合わなさを補填できる(No.1883)

課題がなければデマンドは生まれませんが、その課題をはっきりさせるために、インパクトの設定が実は必要(No.1901)

基本的にはアウトプットまではサービス提供者の視点、アウトカムはサービス受益者や社会の視点で語られます。(No.2031)

既存企業での新規事業の場合、すでに社会へのなにかしらのインパクトが設定されている状況で、自分たちのインパクトをあらためて考え出さなければなりません。この場合、自社の大きなビジョンやミッションを基にインパクトを考えていくことになります。(No.2227)

ブレーキがあるから車はスピードを加減して、急な曲がり角を曲がれるようにもなる(No.2877)

Governance for Innovationは規制改革、Governance of Innovationはリスクコントロールのための新たな規制の追加などが想像しやすいでしょう。Governance by Innovaitionは少しわかりづらいかもしれません。これはデジタル技術というイノベーションによって、ガバナンスの在り方や手法が変わっていくことを示唆しています。(No.3443)

アナログの世界では、どこかで「ゼロか1か」でばっさりと区切らざるを得ませんでした。一方、デジタルの世界では、データに基づいて細やかに分類することができます。(no.3523)

課題とは理想(インパクト)と現状の差分だという話をしました。「あなたの解決しようとしている問題は確かに課題だ」とセンスメイキングしていくためには、理想と現状のそれぞれの認識に納得感を持ってもらう必要があります。かつ、その理想と現実の差分が重要であるということにもなっとくしてもらわなければなりません。(No.4451)