k-takahashi's blog

個人雑記用

キリンのひづめ、ヒトの指

 

キリンの解剖で有名な郡司先生の進化小ネタ紹介集。キリンの首の骨については前著で詳しく紹介していたけれど、こちらはもう少し軽めに色々な進化に関する話題を解説してくれる。

「生物学では、進化と退化は反対の概念ではなく、退化も進化の一部」(No.1909)と、単純な捉え方が適切ではなく、面白くもないことを念頭に、様々な話題を紹介している。

 

最初は首、ではなく肺。魚に肺はなく一部の魚が両生類に進化する途中で肺ができた、というのは単純化しすぎで、進化をよく調べてみると「肺のもととなった器官は、陸上で生き延びることを可能にした器官ではなく、酸素の少ない息苦しい水中でも生きることを可能にした器官」(No.227)だった。陸上生活にむけてはやがてこれが肺になるが、魚類ではこれが呼吸の補助から浮力の調整に役割が変化し、うきぶくろとなった。こんな感じで「とりあえず対応した」「色々使い回した」「問題が解決できればいい」といったことが進化では度々現れる。そういう話が続く。

 

魚の首はどこか、キリンの首があそこまで長くする必要があるのか、体臭ともととなるアポクリン汗腺が形を変えて乳腺となった、キリンの模様は葉や枝の隙間が作る影の形に似ている、角には5種類ある、調理とは消化活動の一部を体外で行っていることになる、草食動物がセルロースを分解するのには胃で行う場合と大腸で行う場合がある、キリンはタン先が長く牛はタン元が長い、2心房2心室は薄い血管壁と高い頭を両立させるためであって効率だけではない、などなど。それぞれ細かな違いや得失、そうなった理由の推測などが述べられている。一口に得失(効率)といっても、どういう条件でなにをどう捉えたときの優位性なのかというのが変わってくることが分かる。

 

一つ一つのエピソードが興味深いし、その解説も面白い。こう言った話に興味があればちょこちょこ読めるのでお手元に一冊。