k-takahashi's blog

個人雑記用

指揮官たちの第二次大戦―素顔の将帥列伝―

 

第二次大戦時の様々な指揮官、有名処では帯にあるデーニッツ、南雲、パットン、ジューコフ。それぞれ分厚い本を一冊費やしても書ききれない人物ではあるが、あえてその一側面を切り取ってみました、という本。

 

加えて、よくある評価についての最新研究によるアップデートの紹介でもある。(大木毅氏は、山本五十六ロンメルグデーリアンと言った人物については、別著があるが、アプローチは似ている)
例えば南雲については、

日本機動部隊の随伴駆逐艦の積載燃料、再給油に要する時間、損傷機の数と種類、再攻撃に使用できる機種と機数、地上目標、目標を爆撃するための大型爆弾の欠如などが仔細に検討され、第二撃を行わなかった南雲の判断は適切であったと結論づけられたのだ(No.297)

とかある。

 

トム・フィリップス大将のエピソード紹介がなかなかとんでもない。マレー沖海戦でイギリス東洋艦隊の司令長官だったフィリップス大将。旗艦プリンス・オブ・ウェールズと運命を共にした、というエピソードが実は間違い(ぎりぎりまで残って指揮を執っていたのは事実だったようで、そのあと救命胴衣を着て脱出しようとしたが間に合わなかった、というのが真相らしい)。これを日本海軍が「誤認識」し、艦長が船と運命を共にするという習慣ができてしまった。

フィリップスの呪縛は、規範・倫理面以外に、日本海軍に深刻な実質的ダメージをもたらした。艦長が勤まる人材を育成するには、十年、二十年の歳月と莫大な費用を要する。司令官や司令長官をこなせるとなれば、それ以上だ。そうした士官たちが、あたら艦と運命をともにしたことにより、日本海軍は指揮官不足をかこつようになったのだ。(No.1069)