k-takahashi's blog

個人雑記用

マルタ騎士団

 

マルタ騎士団によるロードス島の戦いについては、塩野七生の「ロードス島攻防記」が知られているが、本書の方はマルタ騎士団エルサレム、ロードスおよびマルタにおける聖ヨハネ主権軍事病院騎士修道会)創設から現在に至るまでの歴史を紹介している。

十字軍の頃までは「騎士」は十把一絡げの数字としか扱われなかった。騎士の身分の確立と騎士団創設は、この頃に生まれたことになる。貴族は生まれながらに貴族だが、騎士は騎士として認められることで騎士となる、という自負もこの頃が芽生えだろう。

 

本書は研究書ではなく、半公式資料みたいな内容になっている。歴史的正確性というよりはマルタ騎士団とはどんなものなのかを説明するのが中心。創設から時代の変化に合わせてミッションや組織を変更して生き残りを図る経緯が興味深い。自らの血で必要性・有用性をアピールするのも含めてアメリ海兵隊の組織論みたなのを連想したが、マルタ騎士団の場合は時間の流れとか歴史イベントが絡んでくる(イスラム勢力の伸張・後退だの、宗教改革だの)。

 

ナポレオン戦争後が特に顕著だが、何かある毎に欧州各国が金と土地を毟りに来る様子を(極めて控えめに)書いていて面白い。この辺、19世紀に欧州列強がマルタ騎士団を残すに至った政治的思惑って本当のところはなんだったんだろう?

 

領土無き国というのは、フィクションなら「日本沈没 第2部」に関わるが、気候変動の程度によっては島嶼諸国が本当に領土を全て失うかもしれない。そういう点から読んでも面白い一冊。