k-takahashi's blog

個人雑記用

核兵器入門

 

我々はこの核兵器という怪物に対してどのように向き合っていくべきか(No.24)

ということを考える基本となる部分を解説しているので「入門」ということになる。序章では、北朝鮮核兵器(160キロトン)が東京(星海社)上空で爆発したら、どのぐらいの範囲にどのような被害が出るかを推定している。火球、放射線、爆風、熱線が致命的なものとなる範囲を地図で書いている。また核兵器に限らないが、「しゃがむ」「ふせる」が重要な理由も説明している。

第2章では核分裂核融合の基本的な原理、第3章では核兵器の仕組みと歴史を説明。

劣化ウラン弾について「ウラン合金弾」と呼ぶ方が良い(No.1333)としているのが面白い。これは、「劣化」が核兵器に使うためには(核反応を利用するには)、という状況での言葉であって、物理的性質を使う目的なら別に劣化はしていないから、という理由。核兵器とはなにか、という説明の流れからは当然そうなるという話。

 

こうした「核兵器とは?」という説明を踏まえた上の第4章は「核兵器と国際政治」で、著者(多田将)と有識者(小泉悠、村野将)の対談形式で政治的な意味合いや使い道の解説をしている。

「懲罰的抑止と拒否的抑止」、「柔軟反応戦略」、「相互確証破壊」、「単一目的化(先制不使用)」、「核シェアリング」といった言葉の意味と背景が分かりやすく説明される。

他にも「核武装した国をどう抑止するか」では、中露北朝鮮による安全保障環境の悪化や、核を使うかもしれない(核の影)環境での通常戦争の抑止(現状、これには失敗している)をどうするか。

 

我々があまり関心を持たず無防備のままでいると、むしろそれは相手の思うつぼで、実際に核が使われなくても、「核の影」が伸びてくる中で、核の脅しに屈しやすくなってしまいます。(No.2280)

我々が核は使うべきではないと考えるほど、核保有国にとっては核の脅し(核の影)が有効な手段となり、核兵器を所有・利用する価値が高くなる。これは、どうしたものか。

 

と言ったことを考える本。