- 作者: 鈴木銀一郎
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2006/03/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (34件) を見る
10年前にNECクリエイティブから出ていた「ゲーム的人生ろん」の新版。ただ、中身が大部変わっているし、何より、読んだ側の人間も10年歳を取ったわけで、同じ内容でも受け取り方は確実に違う。そう言う意味では、新刊と思って、興味のある人は買うべし。
資料的には、旧タクテクス誌4号に掲載された「日本機動部隊のデザイナーノート」が当時の実情を含めて非常に貴重で面白いと思う。
あとは、個人的に面白いと思ったところを幾つか引用。
「第一が必勝の信念、第二が投入量」は、勝利のための二大原則なのである。ある程度の勝利なら絶対確実なことを保証してもよい。
ただし、それはあくまでもある程度の勝利であって、大勝利のためには、実はもう一つの条件がある。それは強力な意志の力だ。強力な意志は才能と同じで、生まれつきの部分がある。(p.92)
ここで、「必勝の信念」とは適切な目標の設定であり、「投入量」とは必要なものを必要なだけやるということである。(と書くと当たり前すぎるな)。
平成3年の5月、当時の編集長だった鹿内靖さんが、『シミュレイター』の廃刊を提案すると同時に、自分の退職を申し出た。理由は、ボードゲームの時代が終わり、コンピュータゲームの時代になったことだった。
(中略)
私は何日か考えた末に、鹿内さんの提案を受け入れることにした。その頃にはカードゲームのブームにも、かげりが出ていた。コンピュータゲームの記事を増やしたからといって、黒字になる保証はない。かえって読者が減る可能性もある。カードゲームの利益が減っているときに、そういうリスクは負うべきではないだろう。
私は企業規模を縮小しなければならないと決断した。二度の倒産がやっとやくにたったのである。(pp.113-114)
「小説化になるのは簡単なことだよ。毎日書くこと。最後まで書くこと」
(中略)
それは成功のための正しいルールである。(pp.165-166)
あとは、20世紀後半のゲーム界の4つのイノベーションを
- タクテクス:盤・駒の非対称性
- D&D:会話をゲームツールにすることでゲーム展開に無限の可能性を与えた。またプラスサムを導入した。
- モンスターメーカー:記号に過ぎなかったカードにキャラクター性を与えた。
- MTG:デッキをユーザーが決めることにした。
としているのは、かなり異論があるとは思う。(まあ、これは鈴木銀一郎史観だから、これはこれでよい。)
でも、この本は、新紀元社みたいな小さいところではなくて、もうちょっと大手から出して欲しかった。一人でも多くの人に読んで貰えるように。ゲーム界(それもマイナーなRPG界)で閉じておくのは勿体ない。