- 作者: トムデマルコ,Tom DeMarco,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 1999/03/19
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 111回
- この商品を含むブログ (161件) を見る
方法論としてはSFのそれに近いのだと思う。一つ想像力を羽ばたかせた前提を置き、それ以外はひたすら正当に進める。それによって、見えにくかったものがはっきり見えてくる、というしかけ。
本書の場合は、ソフトウェア開発株式会社となった国家でプロジェクト管理実験(兼、実際の開発)を行うという突飛な設定を置き、そして実際のプロジェクト運営はデマルコの知見を生かしたまっとうなものになっている。現実でないがゆえに、分かり易く、リアルな開発物語となった。
全ての章に重要な指摘がある。個人的には、会議の進め方の部分で反省しきりだったが、それ以上に検査をスキップする場面ではかなり驚いた。現実世界でそこまで進めるのは大変だが、これはできたらさぞ快感だろうな。
ところで、一点だけ同意できない部分があった。
主人公のトムキンスはベロックというアホの政治介入のせいでさんざんな目に遭う。そして、こんな金言が書かれる。
病んだ政治(再び)
- 病んだ政治を下から治療することはできない。無駄な努力で時間を浪費したり、自分の立場を危険にさらす必要はない。
- 問題が自然に解決するか、行動するチャンスが来るのを待つしかない場合もある。
- 奇跡が起こることもある(だが、あてにしてはいけない)。
(p.287)
一つめ、三つ目には合意するが、二つめはどうなんだろうか? 私の経験では、病んだ政治が治るチャンスは極めて少ない。本書では、たまたまこのアホが裏工作によって排除されて事なきを得たが、もしベロックが排除されなかったらどうなっただろうか。まともな方法で解決できるようには見えなかった。
ということで、病んだ政治に蝕まれたプロジェクトからは、とっとと脱出する方が良いと思うのだが。