プランク・ゼロ (ハヤカワ文庫 SF―ジーリー・クロニクル (1427))
- 作者: スティーヴン・バクスター,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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「あなたたちはクォグマを使って、なにをしようとしているんだ?」
回転が止まった。「君は不確定性原理のことを聞いたことはあるかね?」
「もちろんある」
「われわれはそれを破ったんだ」
(p.429)
前半には、極限環境にいるエイリアンとのコンタクトネタが幾つか続く。論理を食べる種族や、冥王星、水星、太陽の中に住む知的種族など、とんでもない連中だが、本書は分類上はハードSFなので、ハードSF的方法論で彼らが描写される。
ところが、後半になるとエイリアンがさらにとんでもなくなっていく。おまけにやたらと話のスケールが大きく、人類が支配された、とか種族絶滅の危機とかが、ちょっとした背景としてさらりと出てくる一方で、個人が金儲けのためにビッグバン直後の宇宙の探索に出かけたりもする。
「パイロット」あたりには、航空宇宙軍史的な展開もある。ただ、谷甲州が書くと、暗さや寒さが伝わってくる話になるが、本書の場合は周りのネタが馬鹿でかいので感覚が麻痺してしまい、そういうの感じを忘れてしまうくらい。(勿論、面白さの種類は別だ。)
物理用語にアレルギーが無くて面白い話が読みたければ、文句なくお薦めできる一冊。