オペレーショナル・インテリジェンス―意思決定のための作戦情報理論
- 作者: 松村劭
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
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例えば、ITネットワークを使う場合に注意することとして
- 情報を持つ者と持たざる者とに社会階層が分離する可能性がある。
- 情報交換の道具を部下に命令・指示を与える基本ツールとしては使わないこと。
- 交換される情報資料は、ほとんどの場合、使用目的に合致しない。
- 悪意ある情報操作(宣伝というなでも使われる)に充分に気をつける。
- 情報の所在を探すことは、必ずしも容易ではない。特に情報資料原を突き止めることは不可能に近い。
- 適切な情報資料のショーウインドウが必要なこと(組織内においても誰にアクセスすれば情報資料が入手できるかを公開するシステムが必要)
- 一般に公開されている情報には貴重な情報はないこと
留保を付けたいと思う部分もあるが、概ね妥当な内容だと思う。(ちなみに情報資料はInformation、情報はIntelligenceのこと)
他にも、情報を扱う心得として
- 「何をいつ決めるかを、まず決めよ」
- 「タイムリーに飛び込んでくる情報資料は先入観と結びつきやすくなります」 「待ちで得られた良い話は危ない」
- 「情報は情報を使う能力のある人に伝える」
- 知る権利は対応できる能力、対応する責任・義務によって保証されていなければならない
- 「情報が腐る」という表現(新鮮な情報を上手く使えないことを表現する言い方)
などなど、参考になる。
情報を処理する時の手続きとしても、「先入観フィルター」「練達フィルター」というフィルターがあるというモデル、情報源の信頼性と情報の正確性とを区別してラベル付けして管理する手法、どれくらい情報を収集したかの評価手順(空白時間、空白地帯、利用漏れ、歴史との乖離、をチェックする)、などもなるほどなと思った。
一方で、もともとが軍隊ベースの話をしているので、いわゆるWeb2.0的な発想とはずれている部分も多い。Web2.0方向に物事を進めようとすると色々な抵抗があるが、本書に書かれているような内容はCombatProvenである上に合理性も持っている。つまりかなり手強い仮想相手ということになる(「碁盤の目型組織は情報管理や情報の使用を難しくするだけでなく、人間社会の秩序を崩壊させることになります」なんて部分はWeb2.0の逆の発想)。別に真っ向から論破する必要はなく(というか、分野を区切るとかなんとかしないと多分駄目)、これを前提としてどういう提案を考えるかということになるのだが、そういうベースとしても使える本だと思う。
軍事関係のエピソードは、まあそんなものかなという程度。そっちを期待すると少々肩すかしになると思う。