- 作者: 江畑謙介
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/07/27
- メディア: 単行本
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基本的に、脅威と装備の話が中心でこれに運用が加わる。繰り返されるのは、脅威をきちんと捉えることと柔軟に対応を考え実行すべきだということ。結果的に良かったこともあるが、問題認識や対応のプロセスに問題が山積みな点も指摘している。その装備は本当に必要か、別の方法はないか、その施策は止めて良いのか、など繰り返し問いかけている。F-22に固執するばかりでなく、在来型改良+AWACS充実はどうだとか、高々度気球の再評価とか、ヤマハが中国に不正輸出したRMAXの導入を検討しろとか。
習志野駐屯地は敷地が手狭で空挺団の使う装甲車両が二階建て駐車場に停められており、しかもこれが国道296号線から丸見えの位置にあるとか。これが写真付きで載っていて、まだまだ自衛隊側にも考えなくてはいけない点がおおいことが分かる。
分量が多いため少々読むのは大変だが、ホホイ語で書かれた本とか読んでも百害あって一利なしなだから、それくらいなら本書のつまみ食いの方が遙かに有意義だと思う。本書ベースなら、情報に対する批判、情報の評価に対する批判、対応策に対する批判、ときちんとわけてやれる。例えば著者は自衛隊による市街戦の訓練強化を主張している。これなど議論のタネになりそうな話だが、「敵の着上陸侵攻への抑止力」として機能させるのが目的で、これが機能するとすれば次に狙われるのは島嶼だから、その防衛・奪還策が必要でと繋がっていく。これなら思考停止しないだろう。(現実問題としては、中国なり韓国なりロシアなりが侵攻してきたときに、自衛隊側が市街戦を防衛戦術としてとるとは考えにくいが、それを最初から投げていては抑止力にならない。)
ただ、400ページ以上の紙幅を費やしてなお、語り足りない部分が山のようにある。著者自身が後書きで述べているが「研究開発や防衛生産基盤の問題などには触れることができなかった。防衛支出の削減や、任務の多様化に対する教育訓練の問題、さらには少子化の時代に於ける自衛隊の隊員確保の問題なども省かざるを得なかった」のである。
普段から軍事関係の本とか読んでいる人にとって新規な情報はあまりありませんが、それでもこれだけまとめるとなると大変な話。本書を読んでおけば、防衛白書とかも読みやすくなると思います。とりあえず、つまみ食いで良いので関心のある方はどうぞ。