国産護衛艦建造の歩み 2015年 12 月号 [雑誌]: 世界の艦船 増刊
- 出版社/メーカー: 海人社
- 発売日: 2015/11/17
- メディア: 雑誌
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タイトルには「護衛艦建造」となっているけれど、そのもととなる「防衛構想」の説明にも紙幅を割いている。「こういう方針を考え、こういう制限のなかで、こういう艦・装備を開発した」という流れになる。これを創設時、1〜4次防、ポスト4次防という流れで解説。
設立当初から海上警備重視か国家防衛重視かという議論があり、三自衛隊の重点の置き方、その後も国土防衛重視か海上交通保護重視かという議論が続いている。そうした議論は今でも続いていて、香田氏は、最近の島嶼防衛についても、中共軍の侵略に対して「シー・コントロールを目指すのか、シー・ディナイアルを目指すのか」という観点を指摘している。
ただ、いずれにしても外洋作戦能力は必要。それを目指してきた創設以来の海自の大方針は間違っていなかったという評価。
三次防の最中にエイラート事件があったが、四次防では計画段階でも近代化重点に留まり、おまけにオイルショックもあってその実施も困難という状況だった。そうした、目指すところの議論と実行段階での制約もそれぞれ記載されている。
興味深かったのが、8艦6機体制を具現化する際に問題になった「ヘリの搭乗員・整備員の所属」。艦載機の乗員を指揮するのは艦長なのかという話で、旧海軍でも当初は「空母搭載機は空母の兵器」という考え方から艦長が指揮を執っていた。ところが複数の空母の艦載機が統合行動をとるようになったりして作戦が複雑化し、さらに訓練・補充の必要性や異動の発生などがありこれがうまく機能しなくなっていった。ただ、旧海軍においては空地分離はうまく機能しておらず実証済みということでもなかった。
それでも、現在の自衛隊では空地分離制度が導入されて、機能している。
現役艦については対象外ということでかかれていない。つまりイージス艦については書かれていない。どこかに本書と同じレベルで書かれた良い本はないかな。