k-takahashi's blog

個人雑記用

現代ミリテリー・ロジスティクス入門 〜フローと尻尾

現代ミリタリー・ロジスティクス入門―軍事作戦を支える人・モノ・仕事 (-)

現代ミリタリー・ロジスティクス入門―軍事作戦を支える人・モノ・仕事 (-)

井上孝司氏による兵站入門書。狭義のロジスティクスよりはやや広めの範囲を扱っており、輸送だけでなく調達や整備教育、マニュアル作成までカバーしている。関連する話題を俯瞰するための配慮だろう。


井上氏は「フロー」という言葉を使い、「ヒト、モノ、情報のフローを維持する必要がある」という言い方で、ロジスティクスが最前線と後方の両方をつなぐものであることの説明をしている。トラックはもちろん大事だが、それだけではないということ。


尻尾というのも、物資輸送・補給だけではないことを示すために氏が使っている言葉。

軍隊の活動を支える諸々の人やモノの活動などを、ここでは「自己完結能力の尻尾」と呼んでみたい。軍隊が任務を遂行するためには、任務を遂行するエリアから本国の拠点、さらにはその先のメーカーや納入業者まで、延々と「自己完結能力の尻尾」を引っ張っている。その「自己完結能力の尻尾」が切れれば、結果的に最前線での任務遂行もおぼつかなくなってしまう。そういったものにも、もっと目を向けてみようではないか、というのが本書の最大の意図である。(p.12)

この視点があるので、「ペーパーワークを減らす工夫もロジスティクスの一部」という話題がきちんと扱えているわけです。


数年前に江畑謙介先生が「軍事とロジスティクス*1という本を出されていて、こちらは輸送の部分に重点を置いた本だったが、あれよりは本書の方が分かりやすいと思う。ロジ関係の話が数年で激変するなどということはないけれど、情報が新しいのもやはり大事(無人輸送ヘリK-MAXとか、東日本大震災時の燃料輸送に関わる法的問題とかも扱われている。)なので、今読むなら本書の方が良い。


民間委託の現状や燃料の種類の解説などもあり、軍隊はどんな活動をし、そのためにどういう装備や準備が必要かということが書かれているので、ミリタリー入門書としても使える。
さすがに入門一冊目というわけにはいかないが、「ゲームシナリオのためのミリタリー事典*2を踏まえた上なら充分読み切れると思う。

*1:

軍事とロジスティクス

軍事とロジスティクス

*2:

ゲームシナリオのためのミリタリー事典 (NEXT CREATOR)

ゲームシナリオのためのミリタリー事典 (NEXT CREATOR)