k-takahashi's blog

個人雑記用

グラン・ヴァカンス

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 もっと早めに読んでおけば良かった。SFマガジンに掲載されていた関連短編の位置づけがだいぶクリアーになった。ということで、ラギッド・ガールを注文(全部、SFマガジンで読んでいるはずだけど、まとめて読み直したくなった)。


 中身はもうよく知られている通り、「放棄された仮想リゾート」。その最期の日々(と言っていいのかな?)を描いている。
 設定されているが一度も存在したことのない話、永遠の反復と反復からの逸脱、ゲストとAIの関わり、など面白い。仮想空間内でのみ存在するAI達は、デザイン時点で様々な設定(制約)が加えられている。それらの設定はリゾートを奥深いするものにする一方、各AIの行動原理を規定するものにもなっている。と書くと、ゲームとか小説の世界設定の話に聞こえるが、まさにその通り。数値海岸そのものの位置づけは、MMORPGと大差ないのだから。
 そういう設定の中で活動するAIに仮想空間外からやっている脅威に対応することは可能なのか、可能だとすればそれはどのような方法なのか、という話題が続く。AIは果たして自由なのか、という問題でもある。本作の時点では、AIはまだ自由ではないように感じた。


 そう言った話題の展開の面白さと、文章そのものの良さとが両方楽しめる。ちなみに展開は、著者自ら書いているとおり、美しくも残酷。


 中盤以降に出てくる「凝集する」イメージが、非常に印象的だった。