SFマガジン2012年12月号

S-Fマガジン 2012年 12月号 [雑誌]

2011年発表の海外SF短編から、5編を収録。

『アース・アワー』（ケン・マクラウド）は、オーストラリア緑化計画を背景にしたスリラー仕立ての短編。背景はなんとなくバチガルピの作品っぽさを感じるが、主人公は「アッチェレランド」のマンフレッド・マックスを連想させる不遜さをばらまいている。SF小道具が効果的に使われていて楽しい。長編の前日譚的な印象だった。

『奉仕者（サーバー）と龍（ドラゴン）』（ハンヌ・ライアニエミ）。このサーバーというのは、新しい宇宙の監督をしているのだが、そこにドラゴンがやってきて、というハッタリ宇宙論SF。
サーバーのセキュリティ管理は大事だよ、うん。

『穢れた手で』（アダム＝トロイ・カストロ）。「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」の作者。こちらもかなり特殊な状況の主人公で、子供の頃謎の殺し合いに巻き込まれ、その時に人を殺めたことから戦争犯罪人扱いされてきた。
その主人公アンドレア・コートの、とある外交任務を描いた短編。殺人犯と引き替えに高度技術を引き渡すというエイリアンとの交渉で、異星人コンタクトものなのだが、ラストはインパクトあり。
本特集では一番気に入った。

『地図作るスズメバチと無政府主義のミツバチ』（Ｅ・リリー・ユー）は、上手いのだけれど、ちょっとピンとこなかった。

『静かに、そして迅速に』（キャサリン・Ｍ・ヴァレンテ）は、人工知能成長物語。AIに感情はあるか、人と機械は区別可能か、とだけ書くと普通のSFのようだが、ほとんどの舞台が仮想空間で、しかも回想ものという設定なので、読んでいて頭がわやくちゃになってしまった。
作中の色々な部分が絡まり合い、繋がり合い、様々なメタファーが混じり合い、しているはずなのだけれど、断片的にしか読み切れず。というか、これ読むの大変だよ。