k-takahashi's blog

個人雑記用

SFマガジン2009年2月号

S-Fマガジン 2009年 02月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2009年 02月号 [雑誌]

 日本作家特集なんだけれど、「フルーテッド・ガールズ」(パオロ・バチガルピ)が面白かった。紹介文にある「リディアとニアはフルート化された双子の姉妹。スターへの道を歩むべく……」というのを読んでもピンと来なかったのだが、読み終えると、解説文の「背後に透けて見える社会の異様さや、フルーテッド・ガールズの官能的な演奏シーンなどが印象的」というのが実に適切な紹介だったというのが分かった。短編SFでは注目作家だというが、この一作からでも納得できた。

 演奏開始。まずリディアの体が鳴りはじめる。開放音が全身の開いた鍵から流れ出す。続いてニアの体を鳴らす。二人の体に吹き込まれる息がもの悲しい音を響かせる。
 メランコリックな音が消えると、リディアは顔の位置を移動し息を吸った。おなじくニアの口は姉の体を下の方へ移動する。今度はリディアは妹の手にキスし、ニアは姉の鎖骨の小さなくぼみに唇をあてる。悲しげな調べがくぐもった音で二人の体から発される。(p.269)

 笑ったのが、大森望氏のコラム。「もろびと大地に坐して」(2008年12月号掲載)の日本向け翻案として、こんなことを書いている。

アルタイル人が着陸するのはデンヴァー大学じゃなくて東京大学本郷キャンパスメイドカフェを見せるために、アルタイル人をつれて電気街を歩いているとき、偶然、アニメイト秋葉原店の前を通りかかる。店の前の大画面モニターに映っているのはなぜか「姫ちゃんのリボン」で、SMAPの歌うOP曲「笑顔のゲンキ」が流れてくる。
 で、御想像のとおり、「きみのとなりに座ってさ」のところで、アルタイル人たちがいっせいに路上に座り込むわけですね。(p.100)

から始まる1ページが爆笑もの。いっそ、小説を書き上げてほしい。商業出版はともかく、コミケとかならいけるんじゃ?



 伊藤計劃氏のインタビューも興味深かった。特に

 小説の読み方の多様性がなくなってしまっている世界。どこでどんな感情が起こるかっていうことが全部指定されている世界。
そして、指定されているものだけを教授して消費する。サプリメント文学って言ういいかたもありますけど、いわゆるサプリ的な世界観の究極を描いているわけじゃないですか、『ハーモニー』は。(p.225)

の辺り。ハーモニーを読んだら、このインタビューを読み直そう。