k-takahashi's blog

個人雑記用

フリーメイソン 歴史の喪われたシンボル

フリーメイソン 歴史の喪われたシンボル

フリーメイソン 歴史の喪われたシンボル

 フリーメイソンは何故、「秘密結社」なのか
(中略)
秘密結社という名称に含まれる「秘密」の二文字はいったい何に対する秘密を意味しているのだろうか?
 少なくとも日本においては、この問題について正しく回答できる人は、非常に少ないだろう。それは日本の場合、テレビ番組や映画などの悪影響か、内に含む制度に秘密のある「秘密結社」と、そもそも組織の存在が公表されない「秘密組織」が同一視/混同される傾向が強いためだ。本来、これらは全く異質な存在で、同列で語るべきではない。(p.12)

ネタとしてのフリーメイソンを知らない人は居ないだろうが、実際の所どういう組織なのかを知っている人は少ない。その実際を初心者向けに解説してくれる一冊。


 歴史、伝説、組織、シンボル、の4章構成で一通りの知識を解説してくれている。オカルト本はオカルト本で面白いものだが、当然、実際の知識があればその面白さも倍加しようというもの。そういう点で、ネタファン必読の一冊。
 「実践的フリーメイソン」と「思弁的フリーメイソン」とか、「古代派」と「近代派」とか、言葉も面白い。


 以下に幾つか面白かったところを抜粋。
アメリカ合衆国国璽フリーメイソンが関与していたという伝説についての事実を紹介したあとの部分から)

なお、フリーメイソンが「ピラミッドの中の目」を公式に紋章として使ったのは1819年のことであり、アメリカ合衆国国璽制定の40年近く後のこととなる。要するにアメリカ合衆国国璽制定の法が先だったのである。このことから「フリーメイソンの方がアメリカ合衆国国璽を真似て紋章をデザインした」という説を唱えるものも存在する。(p.73)


 1980年のボローニャ駅で起こった爆弾テロ(極右テロ)に、あるフリーメンイソンリーのロッジが関与していた件。

関与していたロッジの名はPeopaganda Due。極右政治家であるリーチオ・ジェッリによって創設され、イタリアのグランド・ロッジである「イタリア大東社」の傘下にかつて存在し、P2という略称で知られるロッジである。この事件は、安易にフリーメイソンと陰謀やテロを結びつけて考えたがる人々に格好の材料を与え、また一般の人々にフリーメイソンに対する偏見や誤解をまき散らす結果となるなど、フリーメイソンリーに大きな被害をもたらした。(p.108)

一方で、歴史的にはバチカンフリーメイソンが鋭く対立していた時期もある。イタリア統一運動家のガリバルディがメンバーだったこともあって、バチカンが反フリーメイソン宣伝を繰り広げていた時期もあったのだ。


 日本だと、グラバー邸で有名なトーマス・グラバーフリーメイソンのメンバーであり、坂本龍馬をメンバーに引き入れ、薩長同盟の背後で暗躍していたという説がある。以前、グラバー園に観光に行ったときにも「フリーメイソン・ロッジの石柱」というのが展示されていたし。
 しかし、実際には龍馬もグラバーもメンバーだったという証拠はなく、グラバーが倒幕派を支援したのは事実だったが、それがフリーメイソンの活動と関連していたとも考えにくいのだとか。上述の石柱もグラバーのものではないという注が、実はきちんと書かれている。
 一方で、実はあの黒船のペリーがフリーメイソンのメンバーだったとか、さらに面白い事実も紹介している。


 ともかく単純に知識としても面白いし、「よくある陰謀妄想」についても紹介してくれているし、初心者向けに丁寧な解説だし、分量も控えめ、とフリーメイソンというものに興味があるならお薦め。