k-takahashi's blog

個人雑記用

ゾンビサバイバルガイド

ゾンビサバイバルガイド

ゾンビサバイバルガイド

この本はプロのゾンビ・ハンターになるすべを教えるためのものではない。そうした職能に命を捧げたいという者は、よそで訓練してくれる相手を探すべきだ。
この本は警察、軍隊、その他の政府機関の職員に向けて書かれたものではない。そうした組織は、脅威を認識し、それに備えることを選択したならば、一般市民よりもはるかに多くの情報に触れることができる。
このサバイバルガイドは、時間も資金も不足しているが、それでも犠牲者になることを拒む一般市民のためのものである。
(はじめに、より)

CDC(米国疾病予防管理センター)が2011年5月に「Zombie Apocalypse」という記事を出し、広く市民にゾンビに対する備えを説いた。CDCの記事中にも本書が参考として書かれていることからも分かるように、本書はこのジャンルの重要書の一つである。


本書では、ゾンビを「ソラニュウムというウィルスに感染することで変異した新たな生命体」と定めている。ソラニュウムは感染率、致死率とも100%だが、体液の直接接触によってのみ感染する。蚊などによる感染もほぼゼロで、これは虫の側が感染した相手からは吸血しないからである。
感染から1時間後に変色が始まり、20時間後に死亡、23時間後に蘇生(ゾンビ化)する。治療方法は無く、感染部位の切断も成功率は10%程度と言われている。
ラニュウムにより変質した生命体の特徴は、酸素に依存しなくなること。そのため循環器系を破壊してもなんら効力が無い。
ゾンビの肉体には回復能力が無い。ただし、彼らは疲労もしない。筋力は人と同じ程度だが疲れないし痛みも感じないため、延々攻撃を続けることになる。筋肉組織が硬直しており、回復もしないためゾンビの敏捷性は非常に低いことも特徴である。
神経組織も変質してしまっており、知能は低く、虫程度と推測されている。


こうしたゾンビを破壊するのは単純だが難しい。循環器、消化器、呼吸器官などを破壊しても意味が無い。体を動かす信号を出す脳を破壊することだけが、ゾンビを破壊する方法なのだ。


といったところから始まり、「どのような武器でどう戦うのが有効か」「どうやってゾンビの攻撃を防ぐのが効果的か」「どうやって逃げるのか」などが細かく書かれている。
既存の軍隊のドクトリンは、必ずしも対ゾンビ戦を有効に戦うためにはできていないことも分かる。例えば機関銃の一斉掃射はあまり効果が無い。脚を破壊すれば動きを遅らせられるが、それだけだ。腹を撃っても同じようなもの。ゾンビを倒すにはヘッドショットが必要だが、そもそも機関銃はそういう兵器ではない。兵士はそういう訓練も受けていない。
彼らは再訓練しないと、対ゾンビ戦には役に立たないことが分かる。映画などで軍隊があまり有効に機能しない理由はそういうことだったのだ。


ゾンビが溢れた世界で、政府などの組織がどう振る舞うかについては、『ゾンビ襲来』*1で解説されていた。(これも面白い本だった。)
それに対して、本書はあくまでも「個人がどう準備し、対応すれば良いか」に焦点を絞っている。その手のゲームをするなら、一読しておくと楽しみが倍増すると思う。

ゾンビ襲撃記録

ネタとして面白いのは、第7章の「ゾンビ襲撃記録」。紀元前6万年のカタンガ遺跡で発見されたゾンビ事件のものと思われる痕跡や、紀元前3000年のエジプトの遺跡などにはじまり、本書出版直前の2002年のヴァージン諸島でのゾンビ漂着事件まで、60以上の事件について書かれている。
ちなみに、日本には「生者一党」という秘密結社があり、ゾンビ狩りに従事している、ということが書かれている。(日本で、ゾンビのアウトブレイクがないのは、この組織のおかげらしい)

*1:

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える