k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究2010年09月号

軍事研究 2010年 09月号 [雑誌]

軍事研究 2010年 09月号 [雑誌]

巻頭記事は「アメリカ第94陸軍対空ミサイル防衛コマンド司令官アンダーヒル准将に聞く」、合わせて宇垣大成氏の解説記事も。

THAADミサイル・システムの中では、飛来する弾道ミサイルの探知・追跡と迎撃ミサイルの誘導も行うが、車力のレーダーは専ら弾道ミサイルの探知と追跡のみを行うもので、我が国における94AAMDの目となっているものだ。
探知・追跡専用のAN/TPY‐2レーダーが米国以外に配備されているのは、今のところ我が国とイスラエルのみであり、このことからも米軍の我が国の防衛を重視する姿勢が読みとれると言えそうだ。(p.40)

 中国軍についての野木恵一氏の記事に面白い一節があった。

平松茂雄氏は、毛沢東核兵器開発の決断について、「しかしながら毛沢東時代に、中国がひたすら核兵器開発に専心したことは、中国にとっては『賢明な」選択であったといえる。もし中国が通常戦力の近代化に力を入れたとしても、おそらく大したものはでき上がっていなかったであろうから、中国は三流国家として世界から相手にされなかったであろう。中国が大国として発言力を持つようになった背景には、核兵器保有したことがある」(「中国の軍事力」、文春新書)として、核兵器開発と軍の全般的な近代化とが選択の問題であったことを指摘している。(pp.44-45)

同じことを北朝鮮も考えているわけか。


 日本でも武器輸出三原則の見直しの話が出ているが、英国では戦略的な観点から武器輸出を行っているというのが「イギリスの武器輸出支援機関 UKTIDSO」(橋本力)。

イギリスは武器輸出国の世界第五位とされている。しかし、SIPRIの統計は戦闘機や戦車などの”通常兵器のみ”の輸出に焦点が当てられ、変動する国際情勢とその”業界”の現状を反映指定おらず、厳密に言えば正確とは言い難い。なぜなら、「テロとの戦い」という昨今の国際情勢の変化に伴い、この”産業”が単なる軍事兵器の売買ではなく、”安全保障関連”の分野へと大きくシフトしている事実を映し出していないからである。(p.105)

ビジネスと安全保障を単に両立させるどころか、うまく組み合わせて効果を上げている模様。


 「ロシアの新『軍事ドクトリン』を読み解く」(小泉悠)の読みが面白かった。ロシアが対西側強硬路線に転じたと読むのは間違いではないかという指摘。

「軍事的危険」というカテゴリは今回初めて設けられたものであり、その扱いは「軍事的脅威」よりも一段低いことに留意するひつようがあるだろう。つまりNATOは差し迫った軍事的脅威ではなく、あくまでも「特定の条件下で脅威に発展する可能性」として扱われている。ヘルゲンハウエルが指摘しているように、ここで問題にされているのはNATOの軍事力そのものではなく、その拡大による政治的影響なのである。また、旧ドクトリンでは、NATO車による九九年のユーゴスラヴィア空爆を踏まえ、NATOの軍事力行使に対して強い警戒感を示していたが、今回の新ドクトリンにはこうした切迫性は見られない。この点を考慮すれば、NATOに対する軍事的脅威認識は、やや緩和されているとさえ判断できよう。(pp.193-194)

中国警戒論が伺えるという指摘もあり、来年以降どうなるか。